ジャンクフードを食べ過ぎると脳が萎縮する!?

ジャンクフードは肥満、糖尿病、心臓病の要因だけではない

 ポテトチップスや甘い清涼飲料水、インスタントラーメン、ハンバーガーにクッキーなどの加工食品やファストフードは、塩分、糖分、脂質、カロリーを過剰に含むことが多く、一方で良質なたんぱく質、ビタミン、ミネラルや食物繊維などの栄養価は低いため、「ジャンク(がらくた)フード」と呼ばれています。

 ジャンクフードを食べ続けると、肥満、糖尿病や心臓病などの生活習慣病になりやすいと言われていまが、最近の研究では、ジャンクフードが脳にも悪影響を与えること明らかになってきました。


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食べ物が左右するうつ病やうつ状態のリスク

 オーストラリアのディーキン大学のフェリス・ジャッカ教授らは以前から野菜、果物、全粒穀物や魚など、栄養価の高い食品を多く摂取する食事パターンはうつ病やうつ状態のリスクを減らし、一方で飽和脂肪酸および精製された炭水化物を多く含む西洋型の食事パターンは、そのリスクを高めるという研究結果を報告していました。

 そして2015年3月、うつ病など精神疾患に食事や栄養が与える影響について、世界で行われている研究の成果をまとめ、「Lancet Psychiatry」誌上で発表しました。食事や栄養が脳の正常な機能を左右し、結果として心の健康を決定する中心的な役割を果たす点に注目し、研究を進めていると公表しました。

 ジャッカ教授らが注目したのは脳にある「海馬」です。海馬は学習や記憶、抑うつなど気分の調節に関与しています。また成人でも新しい神経細胞を作る「ニューロン(神経)新生」が起きる脳ではまれな領域です。

 これまでの研究では、運動やカロリー制限などは成人の海馬のニューロン新生を増加させ、酸化ストレスや老化はニューロン新生を減少させること。また、海馬の体積はうつ病の成人で減少し、抗うつ薬はニューロン新生と海馬の体積を増加させると報告されてきました。

 また、食事と精神や認知機能の関係についても多くの動物実験が行われ、その中で海馬が重要な役割を果たすことが証明されてきましたが、人間に関しては研究結果が示されてきませんでした。そこでジャッカ教授らは、人間を対象に、食事のパターンが海馬に与える影響を調査。2015年9月号の医学雑誌「BMC Medicine」に報告しました。

 調査はオーストラリアの疫学調査に参加する、60~64歳(2001年時点)の255人を対象に行われました。


不健康な食事で左海馬の体積が小さくなる!?

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 調査参加者はまず、食習慣のアンケート「食物摂取頻度調査票」に答えました。以後、約4年間経過を観察し、MRI(磁気共鳴画像)検査を2回受けました。

 食習慣のアンケート調査の結果、参加者らは

[1]新鮮な野菜、サラダ、果物や魚などを摂取している健康的な食事のグループ

[2]焼き肉、ソーセージ、ハンバーグ、ステーキ、ポテトチップスや清涼飲料水を摂取している西洋型の不健康な食事のグループ

に分類されました。[1]の健康的な食事パターンの参加者たちは、平均的な食事パターンの人より、左海馬の体積が45.7mm3が大きめでした。一方、[2]の不健康な西洋型の食事パターンの参加者たちは、左海馬の体積が52.6mm3小さくなっていました。また、年齢、性別、教育、労働状況、抑うつ症状と投薬、身体活動、喫煙、高血圧や糖尿病など他の要因を除いた食事だけでも、海馬の体積に影響を与えることが分かりました。

 ちなみに、食事パターンと右海馬の体積の間の関係は認められませんでした。なぜ、影響は左の海馬だけで、右の海馬ではないのでしょうか? ジャッカ教授は、バイオメド・セントラルのインタビューに対し、こう話しています。

 「正確な理由は解明されていませんが、以前の研究では、左の海馬は、神経変性疾患でより傷つきやすいことを示しています。また、アルツハイマー病と軽度認知障害では、 左海馬が右海馬よりも小さくなる傾向にあることが明らかになっていますし、実際に左脳は右脳に比べてアルツハイマー病の影響を受けやすい、と考えられています。ですので、この結果は左脳の脆弱性を反映しているのかもしれません」


加工食品は避けなければならない

 この結果を踏まえ、ジャッカ教授は次のように結論づけています。

 「海馬は、一生を通じて学習、記憶および精神的健康の中心です。よって今回の調査結果による見解は、全年齢の人に当てはまるでしょう。つまり、食事の主な成分を野菜、サラダ、果物、豆類、全粒穀物と生のナッツなどの植物性食品、魚や脂肪の少ない赤身肉、オリーブオイルなど、健康な脂質にするべきだということです。

 同時に、清涼飲料水、塩味の揚げたスナック、焼き菓子 (商業的に生産されたドーナッツ、ケーキ、ビスケットなど)のような加工食品は、極力、回避するべきです。健康に良くない脂質や糖分、精製された炭水化物を多く含む食品類は、海馬や消化管に悪影響をおよぼすのです。

 最近の研究で、腸内細菌叢が体や心の健康に関して、中心的な役割を果たすと分かってきました。食物繊維を多く含む食品や発酵食品は、腸内細菌叢の健康を促進しますが、脂肪や人工甘味料、乳化剤を含む加工食品は、腸の健康を損傷してしまうすることが理解されています」


食事パターンと精神障害の発症の関係

 さらにジャッカ教授は、こう続けます。

 「今後、精神障害、特にうつ病に対する、食事がおよぼす影響を評価するための臨床試験が必要です。すでに調査は進んでおり、近々その結果を報告できるでしょう。私は、栄養精神医学という新しい分野が、精神疾患や神経疾患による世界規模の苦悩に立ち向かえると信じています」

 世界保健機関(WHO)によると、精神疾患や神経疾患に苦しむ人は世界で4.5億人にも上り、生涯に4人に1人が経験しています。これまで精神障害の治療は薬物療法に重点が置かれ、精神障害に苦しむ人々の数は世界中でそれなりに減少しましたが、特に大きな割合を占めるうつ病と不安障害の人口は、今後数十年のうちに世界全体でさらに増加すると示唆されています。

 精神障害の発症には遺伝や環境などのさまざまな要素が複雑に影響しあっていますが、今回の報告で、食事のパターンの重要性が示されました。

(Nikkei Tredyより要約)

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