私は神の心と思いに(BWV92)

 今日聴く日曜カンタータは復活節前第9主日(七旬節の主日)のために、作曲され、1725.1.28ライプツィヒで初演されたコラール・カンタータです。この曲は昨年も聴いたのですが、コラール年間に合わせて演奏家を変えて聴くことにします。

 P.ゲールハルトの神信頼コラールが基になっていますが、カンタータの歌詞は全9節のコラールの詩節と対応し、5節のコラールが引用されています。


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ゴッホ 赤い葡萄畑


 コラールとの結びつきが強い半面、当日の福音書の内容であるぶどう園の労働者のたとえとの関連は希薄で、洪水や嵐を克服し、牧者としてのイエスに従おうという内容です。今年は巡って来なかった公現後第4主日の内容とも重なっています。


 今回は鈴木雅明指揮、バッハ・コレギウム・ジャパン、野々下由香里 (S)、ロビン・ブレイズ (CT)、ヤン・コボウ (T)、ドミニク・ヴェルナー(B)の演奏でお聴きください。




私は神の心と思いに(BWV92)

1.コラール(合唱 )

Ich hab in Gottes Herz und Sinn

「私は神の心と思いに

Mein Herz und Sinn ergeben,

私の心と思いをすべて献げます。

Was boese scheint, ist mein Gewinn,  

悪と見えることが私の益であり、

Der Tod selbst ist mein Leben.  

死は私の命なのです。

Ich bin ein Sohn

私はあの方の子、

Des, der den Thron

天の王座を

Des Himmels aufgezogen;

引き開ける方の。

Ob er gleich schlaegt

彼が私を打ち、

Und Kreuz auflegt,

十字架を負わせるとしても、

Bleibt doch sein Herz gewogen.

そのみ心は私に愛顧を与えておられる」。

2.コラールとレチタティーヴォ (バス)

Es kann mir fehlen nimmermehr!   

「神の愛顧は失せることはありません」。

Es muessen eh'r  

それどころか

Wie selbst der treue Zeuge spricht,   

忠実な証人が告げているように

Mit Prasseln und mit grausem Knallen  

雨あられの音と恐ろしい轟音とともに

Die Berge und die Huegel fallen:  

山々と丘が崩れるとしても、

Mein Heiland aber truget nicht,   

私の救い主は欺かず、

Mein Vater muss mich lieben.   

「必ず私の父は私を愛して下さる」。

Durch Jesu rotes Blut bin ich

イエスの赤い血によって私の名はそのみ手に

in seine Hand geschrieben;

書き記されています。

Er schuetzt mich doch!  

主は私を守っておられるのです。

Wenn er mich auch gleich wirft ins Meer,   

「主が私をたとえ海の投げ入れるとしても」、

So lebt der Herr auf grosen Wassern noch,   

それでも主は大海の上に生きておられます、

Der hat mir selbst mein Leben zugeteilt,   

主は私にその命を分け与えてくださった、

Drum werden sie mich nicht ersaufen.   

だから海も私を溺れさせるることはない。

Wenn mich die Wellen schon ergreifen   

たとえ波が私をとらえ、

Und ihre Wut mit mir zum Abgrund eilt,  

その憤怒でもって私を奈落に急がせようとしても、

So will er mich nur ueben,   

「主は私を試みようとしておられるのです」

Ob ich an Jonam werde denken,   

私がヨナを思い起こすかどうか

Ob ich den Sinn mit Petro  

私がペトロと共に心を主に

auf ihn werde lenken.  

向けるかどうかを

Er will mich stark im Glauben machen,   

主は私の信仰を強めようとしておられるのです、

Er will vor meine Seele wachen   

主は私の魂のために目覚めておられるのです。

Und mein Gemuet,

「そして私の気持ちを」、

Das immer wankt und weicht in seiner Gut,  

主の恵みの中にありながらいつも揺れている

Der an Bestaendigkeit nichts gleicht,   

私の気持ちを、くらべるもののない確かさで、

Gewohnen, fest zu stehen.   

「堅く立つことに習熟させようとしておられるのです」。

Mein Fus soll fest   

私の足を堅く立たせて、

Bis an der Tage letzten Rest  

最後の憩いの日まで、ここで、この岩の上に

Sich hier auf diesen Felsen gruenden.  

しっかりと根を下ろさせて下さいます。

Halt ich denn Stand,

「私がこの立場をしっかり守るなら」

Und lasse mich in felsenfesten Glauben finden,   

そして岩のように堅い信仰を自覚するなら、

Weis seine Hand,   

「主のみ手は」、

Die er mich schon vom Himmel beut,   

今すでに天から私をとらえている主のみ手は、

zu rechter Zeit  

正しい時に、

Mich wieder zu erhoeehen.

「私を再び天へと高める道をご存じです」。

3.アリア (テノール)

Seht, seht! wie reist, wie bricht, wie faellt,   

視よ、視よ、裂け、砕け、崩れる、

Was Gottes starker Arm nicht haelt.  

神の強いみ手に支えられていないものは。

Steht aber fest und unbeweglich prangen,   

しかし、堅く、揺れることなく輝く、

Was unser Held mit seiner Macht umfangen.  

私たちの勇士がその力で抱きしめるものは。

Lasst Satan wueten, rasen, krachen,   

サタンよ、吠えろ、叫べ、轟け、

Der starke Gott wird uns unueberwindlich machen.   

強い神は私たちを敗れさせはしない。

4.コラール (アルト)

Zudem ist Weisheit und Verstand   

それに加えて知恵と知識は

Bei ihm ohn alle Massen,   

神にあっては限りありません、

Zeit, Ort und Stund ist ihm bekannt,   

時、所、時間を神はご存じです、

Zu tun und auch zu lassen.   

なすべき時・所と放置すべき時・所を。

Er weis, wenn Freud,   

神はご存じです、

er weis, wenn Leid

喜びと苦しみが

Uns, seinen Kindern, diene,   

神の子である私たちに、いつ役に立つかを。

Und was er tut,

そして神のなし給うことは、

ist alles gut,

すべて良いのです、

Ob's noch so traurig schiene.   

たとえ今はどんなに悲しく見えたとしても。

5.レチタティーヴォ(テノール)

Wir wollen uns nicht laenger zagen   

もはや臆することはやめよう、

Und uns mit Fleisch und Blut,   

肉と血を持つ私たちのことを

Weil wir in Gottes Hut,  

今までのように怖れて心配しないようにしよう、

So furchtsam wie bisher befragen.  

私たちは神の守りの中にいるのだから。

Ich denke dran,  

私は思い巡らします、

Wie Jesus nicht gefuercht' das tausendfache Leiden;  

イエスが幾千もの苦しみを怖れなかったことを。

Er sah es an  

イエスは見なされた、

Als eine Quelle ewger Freuden.  

その苦しみを永遠の喜びの源と。

Und dir, mein Christ,  

そして私のキリスト者よ、

Wird deine Angst und Qual,  

あなたの不安と苦悩、

dein bitter Kreuz und Pein  

あなたの苦い十字架と苦しみは

Um Jesu willen Heil und Zucker sein.  

イエスのおかげで救いと砂糖となるのです。

Vertraue Gottes Huld  

神の恵みに信頼しなさい、

Und merke noch, was noetig ist:  

必要なものに目を向けなさい、

Geduld! Geduld!   

それは忍耐、忍耐。

6.アリア (バス)

Das Brausen von den rauhen Winden  

荒い風が吹き荒れることが、

Macht, dass wir volle Ahren finden.  

私たちに豊かな実りの穂をもたらし、

Des Kreuzes Ungestuem schafft  

十字架の恐ろしさが、

bei den Christen Frucht,  

キリスト者に稔りをもたらす。

Drum lasst uns alle unser Leben   

だから、私たちは私たちの命のすべてを

Dem weisen Herrscher ganz ergeben.  

賢明な支配者にお委ねしよう。

Kusst seines Sohnes Hand,  

そのみ子の手に口づけし、

verehrt die treue Zucht.  

信実なしつけに敬意を示そう。

7.コラールとレチタティーヴォ(ソプラノ、アルト、テノール、バス)

Ei nun, mein Gott, so fall ich dir

「ああ、今こそ、私の神よ、私は

Getrost in deine Haende.   

安らかにあなたのみ手に中へお委ねします」。

 (B)So spricht der gottgelassne Geist,   

神に身を委ねた霊はそう言います、

Wenn er des Heilands Brudersinn   

彼が、救い主の兄弟のような思いと

Und Gottes Treue glaubig preist.  

神の真実を信じて賛美する時には。

Nimm mich, und mache es mit mir  

「私を受け入れ、

Bis an mein letztes Ende.  

私の最期まで受け入れ続けて下さい」

 (T) Ich weiss gewiss,   

私はよく知っています、

Dass ich ohnfehlbar selig bin,  

私が間違いなく浄福の中にあることを、

Wenn meine Not und mein Bekuemmernis  

私の苦難と私の悩みが

Von dir so wird geendigt werden:  

あなたによって終わりを迎える時には。

Wie du wohl weist,dass meinem Geist

「あなたもよくご存じのように、私の霊が、

Dadurch sein Nutz entstehe,   

それによって益を受けますように」。

 (A)Dass schon auf dieser Erden,   

すでにこの地上で、

Dem Satan zum Verdruss,   

サタンにとって不愉快なことには、

Dein Himmelreich sich in mir zeigen muss  

あなたの天の国は私の中に示されていて、

Und deine Ehr je mehr und mehr   

「あなたの栄光がますます

Sich in ihr selbst erhohe,   

ご自身の中で高められますように」。

 (S)So kann mein Herz nach deinem Willen  

こうして私の心はみ心に従って、

Sich, o mein Jesu, selig stillen,  

おお私のイエスよ、幸せに安きを得、

Und ich kann bei gedampften Saiten  

私は鈍い弦ではあっても、

Dem Friedensfurst ein neues Lied bereiten.  

平和の主に新しい歌をお献げできるのです。

8.アリア (ソプラノ)

Meinem Hirten bleib ich treu.  

私の羊飼いに私は忠実であり続けます。

Will er mir den Kreuzkelch fuellen,  

たとえ彼が私に十字架の杯を満たすとしても、

Ruh ich ganz in seinem Willen,   

私は安らかにみ旨に従おう、

Er steht mir im Leiden bei.  

苦難の中でも彼は私の傍らにいてくださる。

Es wird dennoch, nach dem Weinen,  

涙の後には、それでもなお、

Jesu Sonne wieder scheinen.  

イエスの太陽が再び輝くのです。

Meinem Hirten bleib ich treu.  

私の羊飼いに私は忠実であり続けます。

Jesu leb ich, der wird walten,   

イエスのために私は生き、イエスは

Freu dich, Herz, du sollst erkalten,   

支配するでしょう。心よ、喜べ、お前は冷たく横たわる定めなのだ、

Jesus hat genug getan.  

イエスはすべてを成就してくださった。

Amen: Vater, nimm mich an!   

アーメン。父よ、私を受け入れてください。

9.コラール

Soll ich den auch des Todes Weg   

私が死の道、

Und finstre Strase reisen,

暗い通りを旅する定めであるとしても、

Wohlan! ich tret auf Bahn und Steg,

よろしい、私はその道と通りを進もう、

Den mir dein Augen weisen.

あなたの眼差しが私に示すその道を。

Du bist mein Hirt,

あなたは私の羊飼い、

Der alles wird

すべてを

Zu solchem Ende kehren,

このような終わりへと向かわせるお方、

Dass ich einmal   

こうして私も、いつの日か、

In deinem Saal

あなたの広間で

Dich ewig moege ehren.

永遠にあなたを賛美できますように。

     川端純四郎 訳


マタイによる福音書 20章 1-16

 「天の国は次のようにたとえられる。ある家の主人が、ぶどう園で働く労働者を雇うために、夜明けに出かけて行った。主人は、一日につき1デナリオンの約束で、労働者をぶどう園に送った。また、九時ごろ行ってみると、何もしないで広場に立っている人々がいたので、『あなたたちもぶどう園に行きなさい。ふさわしい賃金を払ってやろう』と言った。それで、その人たちは出かけて行った。主人は、十二時ごろと三時ごろにまた出ていき、同じようにした。

 五時ごろにも行ってみると、ほかの人々が立っていたので、『なぜ、何もしないで一日中ここに立っているのか』と尋ねると、彼らは、『だれも雇ってくれないのです』と言った。主人は彼らに、『あなたたちもぶどう園に行きなさい』と言った。

 夕方になって、ぶどう園の主人は監督に、『労働者たちを呼んで、最後に来た者から始めて、最初に来た者まで順に賃金を払ってやりなさい』と言った。そこで、五時ごろに雇われた人たちが来て、1デナリオンずつ受け取った。最初に雇われた人たちが来て、もっと多くもらえるだろうと思っていた。しかし、彼らも1デナリオンずつであった。

 それで、受け取ると、主人に不平を言った。『最後に来たこの連中は、一時間しか働きませんでした。まる一日、暑い中を辛抱して働いたわたしたちと、この連中とを同じ扱いにするとは。』
 主人はその一人に答えた。『友よ、あなたに不当なことはしていない。あなたはわたしと1デナリオンの約束をしたではないか。自分の分を受け取って帰りなさい。わたしはこの最後の者にも、あなたと同じように支払ってやりたいのだ。自分のものを自分のしたいようにしては、いけないか。それとも、わたしの気前の良さをねたむのか。』このように、後にいる者が先になり、先にいる者が後になる。」

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