6つのフランス組曲(BWV812~BWV817)

 組曲とは一般に前奏曲や序曲などの導入曲の後に、アルマンド、クラント、サラバンド、ジグなどの舞曲を組み合わせたバロック時代の音楽形式です。

 BACHには管弦楽組曲、無伴奏チェロ組曲、イギリス組曲、などの優れた作品がありますが、ピアノ初心者にも親しまれているフランス組曲は、前奏曲がなく舞曲だけで構成されています。


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フランソワ・ユベール・ドルーエ<ファヴァール夫人の肖像>


 フランス組曲という通称もイギリス組曲同様、BACH自身によるものではなく、BACHはこの組曲集を「クラヴサンのための6つの組曲」と呼び、息子や弟子たちは前奏曲を持たないことから、「小さな組曲」と呼んだと言われます。

 この組曲集は元来、1721年にアンナ・マグダレーナと再婚したBACHが彼女のために作曲した組曲集で、弟子たちのクラヴィーアの教材として用いられました。


 現代ではピアノで演奏されることも多いのですが、ピアノは除外して、各曲を6人のチェンバリストの演奏で聴き比べてみました。


第1番ニ短調(BWV812)トン・コープマンの演奏です。使用楽器はウィレム・クルスベルヘンによるリュッカースのレプリカで1993年の収録です。


アルマンド・クラント・サラバンド・メヌエットⅠ・メヌエットⅡ・ジグ




第2番ハ短調(BWV813)はアメリカのアラン・カーティスですが、昨年7月に亡くなりました。1979年の録音です。


アルマンド・クラント・サラバンド・エール・メヌエットⅠ・メヌエットⅡ・ジグ



第3番ロ短調(BWV814)ブランディーヌ・ランヌーの演奏会の録画です。演奏日時は不明ですが、2015年10月に公開されているので、比較的新しい演奏だと思います。


アルマンド・クラント・サラバンド・アングレーズ・メヌエットⅠ・メヌエットⅡ・ジグ



第4番ホ長調(BWV815)は名手、クリストフ・ルセの演奏です。使用楽器はヨハネス・リュッカース1632年製のチェンバロで、2004年の録音です。


アルマンド・クラント・サラバンド・ガヴォット・エール・メヌエット・ジグ



第5番ト長調(BWV816)はスコット・ロスに師事した曽根麻矢子の演奏動画です。使用楽器はヨハン・ハインリヒ・グレープナー(1739年制作)モデルによるデヴィッド・レイのレプリカです。


アルマンド・クラント・サラバンド・ガヴォット・ブレ・ルール・ジグ



第6番ホ長調(BWV817)最後はオランダのボブ・ファン・アスペレンです。クリスティアン・ファーターのオリジナル楽器(1738年)で2003年の収録です。


アルマンド・クラント・サラバンド・ガヴォット・ポロネーズ・ブレ・ジグ・メヌエット




 6人の演奏を聴き比べると、クリストフ・ルセは自然なアゴーギクをつけた演奏で、優雅で気品のある美しさを感じます。トン・コープマンは少し落ち着きがなく、せかせかした印象を与えます。不要な装飾音も気になります。

 アラン・カーティスは明らかレオンハルトの影響を受けた演奏です。ブランディーヌ・ランヌーも同様にアゴーギクをつけた演奏ですが、少し単調です。

 曽根麻矢子は素直な演奏で、しかも暗譜で演奏しているので好感が持てますが、クラントやガヴォットなどテンポの速い曲に躍動感がありません。

 ボブ・ファン・アスペレンは模範的な優れた演奏です。しかしクルストフ・ルセを聴いたあとでは、あまり魅力を感じません。やはりクリストフ・ルセは表現力が優れています。ルセの演奏はYoutubeで全6曲が聴けます。


舞曲について

アルマンド:16世紀のヨーロッパで流行したドイツ起源の舞曲。古典組曲を構成

   する最初の舞曲となる。

クラント:16世紀にフランスで生まれた、2分の3拍子または4分の6拍子の軽快な
  感じの舞曲。

サラバンド:12世紀にスペインで発生し,17~18世紀にヨーロッパの宮廷で流行
   した3拍子による荘重な舞曲。

メヌエット:3拍子のフランスの舞踊、およびその舞曲。フランス語の menu (小
   さい) が語源といわれる小幅のステップで,中庸なテンポの優雅な
   曲に合せて踊る。

ジグ:17,8世紀のヨーロッパで流行した8分の6拍子または8分の9拍子の舞曲で、
   イギリスやアイルランドの民俗的な踊り。

エール:イタリア語で言うアリアのことで、歌謡風の音楽。従って、エールは舞曲
ではなく、組曲の中にしばしば挿入された器楽曲。

アングレーズ:「イギリスの」の意味 舞踏の詳細は不明 ガヴォット風で、アウ
フタクトを持たない。

ガヴォット:フランス起源の舞曲 速度は中庸で,4分の4,または2分の2拍子に
   より,4分音符2つの弱拍をもつ。

ブレ:通常,半拍のアウフタクトをもつ元気のよい2拍子のリズムの舞曲で,スペ
   インのビスケーやブルターニュ地方の民俗音楽に由来する。

ポロネーズ:ポーランドの代表的な民族舞踊。3拍子で,3連符の使用や短く明確
   な動機の繰返しなどによる歯切れのよい独特のリズムをもち,宮廷の
   儀式や戦士の凱旋行進から発達した集団舞踊。

ルール:フランスのバロックダンスの1形式。ノルマンディーで生まれたものと見

  られ、同名の楽器(ミュゼットの一種)からその名がついた。テン
  は、スロー、あるいはモデラートで、拍子は6/8、3/4、6/4である。

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