赤ワインの健康効果

 ワインといえば、今から十余年ほど前に赤ワインの健康効果がマスコミで大きく取り上げられ、一大赤ワインブームが巻き起こりました。赤ワイン人気が急上昇したきっかけが、「フレンチ・パラドックス」です。


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 フレンチ・パラドックスとは、「フランス人は喫煙率が高く、バターや肉などの動物性脂肪の摂取量が多いのに、心疾患による死亡率が低い」という説です。フランスのルノー博士らによる、10万人を対象にした乳脂肪(動物性脂肪)及びワインの消費量と、虚血性心疾患(心筋梗塞・狭心症)の関係性の調査により、1990年代前半に明らかとなりました。その内容を米CBSがテレビで報道したところ、停滞していたワインの売り上げが急増する社会現象が起こり、日本でも97年くらいから赤ワインの健康効果が各メディアで取り上げられました。この影響でそれまでは日本酒や焼酎一辺倒だった人も、赤ワインを口にするようになりました。


ポリフェノールとはそもそも何か?

 赤ワインが注目されるようになったのは、豊富に含まれるポリフェノールによるものです。確かに、ポリフェノールはお茶などの他の飲料や食品にも含まれていますが、赤ワインは圧倒的に含まれている量が多く、緑茶と比べると実に6倍ものポリフェノールが含まれています。ポリフェノールはビールや日本酒など、他の醸造酒にも含まれていますが、赤ワインの含有量は圧倒的です。

 ポリフェノールは、植物が光合成によって生成する色素や苦味の成分で、活性酸素による酸化からカラダを守る抗酸化物質です。植物が自らを守るために作り出した成分なので、基本的に植物ならポリフェノールを含んでいます。ポリフェノールは5000以上の種類があり、赤ワインに含まれる代表的なものは、アントシアニン、リスベラトロール、タンニンなどが挙げられます。

 ポリフェノールは亀の甲のような形をしたベンゼン環に、ヒドロキシ基(OH基)がついた“フェノール”と呼ばれる物質が複数結合した構造をしています。OH基が多いほど抗酸化作用が強くなります。



 ワインは含まれるポリフェノールの量が多いだけでなく、カラダに吸収されやすいという特徴があります。ポリフェノールは、野菜や果物にも豊富に含まれていますが、野菜や果物の組織内に含まれるポリフェノールは、水に溶けにくいため人の腸で吸収されにくく、一方、ワインには体内に吸収されやすい“溶解した形”で多量に存在しているため、体内に効率よく取り込まれます。

 ブドウの果皮と種子に多くのポリフェノールが含まれていますが、赤ワインは果皮、果汁、種子のすべてを加えて発酵させ、発酵を終えた後も特有の色や渋みを出すため、しばらくそのまま漬け込みます。果皮と種子を除いて仕込む白ワインに比べ、赤ワインのポリフェノールが豊富なのは、こうした醸造法の違いが大きく影響しています。


カベルネが一番効果があり!?

 赤ワインに含まれるポリフェノールの健康効果はいくつもありますが、真っ先に挙げられるのは「フレンチ・パラドックス」に起因する虚血性心疾患、動脈硬化に対する効果です。

 また、米カリフォルニア大学デービス校のフランケル博士は、ワイン由来のポリフェノールによるLDL(悪玉)コレステロールに対する抗酸化能力をビタミンEと比較しました。その実験から、赤ワインのポリフェノールはビタミンEの半分の濃度で、LDLコレステロールの酸化を防いだという結果が出ています。この“酸化を防ぐ”という部分がとても重要で、LDLコレステロールはそのままでは悪さをせず、活性酸素によって酸化されることで、初めて動脈硬化の原因となります。赤ワインのポリフェノールは、活性酸素を取り除く効果が高いく、ポリフェノールの中のアントシアニン(赤ワインの色素の素)が活性酸素を消去する効果が高いことが確認されました。

 さらに赤ワインの種類や熟成年数による抗酸化作用(活性酸素の消去能力)については、若い赤ワインよりも熟成を重ねた赤ワインの方が、抗酸化作用が高くなる傾向があります。ピークは約5年で、その後は緩やかに効果が減っていきます。  ブドウの品種では、カベルネ・ソーヴィニヨンが最もポリフェノールを含み、抗酸化作用が高く、ボルドーのメドック地区のワインやチリ、カリフォルニアなどのワインで使われる品種で、ボディがしっかりしたタイプのワインです。つまり、ボディがしっかりした重めのタイプの方が健康にはいいということになります。


赤ワインは認知症にも効果あり


 抗酸化作用に加え、昨今、注目されているのが果皮に含まれるリスベラトロールです。このポリフェノールは、脳の機能を円滑にし、記憶力の回復やアルツハイマー病を予防する効果があるといいます。

 ボルドー大学中央病院が65歳以上の3777名を対象に、飲酒量と死亡率、認知症、アルツハイマー症のリスクを3年間にわたって調査したところ、驚くべき結果が出ました。ワインを毎日3~4杯(375~500ml)を飲んでいるグループと、非飲酒グループでの発症リスクを比較したところ、認知症は5分の1、アルツハイマー症は4分の1、死亡率は約30%低下したことがわかったのです。これはリスベラトロールが、外界刺激を伝達する酵素『MAPキナーゼ』を活性化するためと考えられています。

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 リスベラトロールが、老化を抑制する機能を持つサーチュイン遺伝子を活性化させ、寿命を延ばすという報告も発表されています。2006年には、リスベラトールによってマウスの寿命が延びるという論文が発表されました。高カロリーのエサを与えるとマウスは短命になるが、リスベラトロールを同時に与えると普通食と同様に生存したというものです。この発表により、アメリカではリスベラトロールのサプリメントが売り切れる事態になったといいます。日本でも複数のメーカーが「長寿遺伝子を活性化させる」「アンチエイジング」などとうたってサプリメントを販売しています。

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 赤ワインにはリスベラトロールが10mg/L程度含まれます。日常的に飲む酒を赤ワインに変えれば、こうした効果の恩恵に多いにあずかれそうです。

 赤ワインには、ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)の殺菌作用もあります。カリフォルニア州立大学フレズノ校の実験では、市販の赤ワインなどが15分以内にピロリ菌の増殖を阻害したという結果が出ています。このほか、血液の柔軟性が増し、毛細血管の血流が促進されることもわかっています。

 このようなさまざまな研究結果を見ていくと、数あるお酒の中で、なぜ赤ワインばかりがフィーチャーされるのか、その理由がよくわかります。


男性ならワイングラスで2杯程度が適量

 とはいえ、大量に飲めば健康どころか、アルコールの弊害の方が大きくなってしまいます。ではどのくらいの量が「適量」なのでしょうか?

 純アルコールに換算して10~30g 、つまり100~300mlが適量と呼ばれる範囲で、ワイングラスにして2杯程度です。女性の場合、アルコールによって、乳がんをはじめとするリスクを受けやすいので100ml程度が理想だといいます。

 左党からすると、「ワイングラス2杯」は物足りませんが「毎日ではないなら、2人でボトル1本を空ける程度なら許容範囲です。要は純アルコールに換算して、週で150g内(週2日は休肝日)に収めます。

 赤ワインが苦手な人は料理に使って、ポリフェノールを摂るという手もあります。赤ワインのポリフェノールは加熱しても壊れにくく、約6割残ると言われています。料理に使えば味に深みも出て一石二鳥です。

 牛肉の赤ワイン煮を食べながら、フルボディの赤ワインを飲む…。想像しただけで喉が鳴ります。おいしくて、つい飲み過ぎてしまいそうですが、二日酔いになるほど飲んでしまえば、せっかくの健康効果も水の泡。何事もほどほどが肝心です。

(日経Goodayより要約)
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