アインシュタインが予言した「重力波」を米チームが初観測

 100年前にアインシュタインが存在を予言し、世界の研究者が観測を目指していた「重力波」が、米国の研究チームによって初めて観測したと発表しました。最終的に確認されれば理論が実証されたことになり、物理学の歴史的な成果です。光や電波ではわからない宇宙の姿を探る新たな天文観測にも道が開けるといいます。

 重力波は、時間や空間がわずかに伸び縮みする「時空のひずみ」がさざ波のように伝わる現象で、物体が加速して動くときに起こるといい、アインシュタインが1916年、一般相対性理論で予言していました。


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 重力波はあらゆる運動で生じるとされますが、極めて微弱で通常は観測できません。このため、星の合体などで生じた大きな重力波をとらえることになります。研究チームは米国2カ所にある装置「LIGO(ライゴ)」の性能を大幅に高め、昨年9月から今年1月上旬まで観測、分析作業を進めていました。

 重力波が観測されたのは現地時間2015年9月14日午前5時51分、米国ルイジアナ州リビングストンとワシントン州ハンフォードにある2台の検出器両方でした。重力波の元となったのは13億年前に起きた超巨大なブラックホールの衝突だそうです。それが起きた時点では、太陽の3倍の質量が一瞬でエネルギーに変換されたといいます。


2015年9月14日にLIGOによって検出された重力波のチャープ パターン


アインシュタインの「最後の宿題」

 アインシュタインが発表した「一般相対性理論」は宇宙の数多くの現象を言い当て、現在の物理学の土台となっていますが、そのなかで唯一、直接観測されていなかったのが100年前に予言した「重力波」です。このため、アインシュタインの「最後の宿題」といわれていました。

 一般相対性理論では、すべての質量がある物体はその質量に応じて空間をゆがめ、そこを流れる時間の早さも変わるとされています。「重力波」は、その物体が動いた際に空間のゆがみが波となり、光の速さで周囲に伝わるもので、何にも遮られることはないと予言しています。

 1993年には、アメリカの2人の物理学者がお互いの周りを回っている2つの星の軌道の分析から重力波の存在を間接的に証明したとして、ノーベル物理学賞を受賞しています。しかし、予言された空間のゆがみは極めて小さいため、これまで理論の発表から100年間、重力波を直接観測した例はなく、世界の研究機関がしのぎを削っていました。


LIGO重力波観測所とは


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 「LIGO重力波観測所」はアメリカのカリフォルニア工科大学とマサチューセッツ工科大学が中心となって建設した観測施設で、実験には、世界15か国の1000人以上の科学者が参加しています。

 長さ4キロメートルの2本の長大なパイプをL字型に組み合わせ、そのパイプの中を真空に保っている施設で、アメリカの西部ワシントン州と南部ルイジアナ州の2か所に同じ施設が2つあります。2つの施設では、パイプの中でレーザー光線を照射していて、その光線が往復する時間に僅かな変化があると、それが重力波による変化である可能性が高いとされ、同じ変化を2か所の施設で同時に観測して互いに検証することで重力波かどうかを判定できるということです。



 LIGOでの重力波の観測は2002年から始まりましたが、2010年までの8年間一度も重力波を観測できず、いったん運用を終えています。その後、観測の能力を10倍に上げるための改修工事がおよそ5年かけて行われ、「アドバンストLIGO」より高度になったLIGOとして昨年9月から再び観測を始めていました。

 研究チームがとらえたのは、長さ4キロの検出器に対し、水素の原子核の1万分の1程度と極めて小さいひずみです。重力波の観測装置は「重力波望遠鏡」とも呼ばれ、重力波をとらえることで、二つの星が互いに回る連星の動きや超新星爆発、宇宙の始まりなど様々な天体現象を新たな観点で探れるようになるといいます。

 重力波の観測は欧州や日本も取り組んでいます。神岡鉱山(岐阜県)の地下にある東京大宇宙線研究所などの観測施設「KAGRA(かぐら)」は昨秋ほぼ完成、17年度から本格観測を始めます。


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NASA「待ちに待った一歩」

 アメリカを中心とした国際研究チームが「重力波」を初めて直接観測したと発表したことについて、NASA=アメリカ航空宇宙局はプレスリリースで、LIGO重力波観測所での観測結果を紹介し、「私たちの宇宙に関する知識のほとんどは、星々などが出す光の観測を通して形づくられてきた。重力波で研究できるということは、たとえるならば、新しい窓を通して宇宙を見ることができるということで、ほかの手法による観測を多いに補ってくれるだろう」とコメントして観測結果を高く評価しました。そのうえで、NASAは、LIGOが今回重力波を通して直接観測したという2つのブラックホールが合体する現象について、「X線などを通して観測を試みている。複数の手法による観測ができれば、この現象をより深く理解できることにつながる」と述べていて、ヨーロッパ宇宙機関などと共同で探査に取り組んでいくとしています。

(Asahi Digital、NHK News Web、Gizmodo他より)
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