人間は何歳まで生きられるのか?

長生きのギネス記録はフランス人女性の122歳

 人間が何歳まで生きられるのか、諸説ありますが120歳まで生きられるという説の最大の根拠は、“実際に生きた人がいるから”ということに過ぎません。

 フランス人女性のジャンヌ・カルマンさんが1997年に122歳で亡くなりました。これが現在公式に認められている「長生き」の世界記録で、つまり、120歳まで生きられるというのはあくまで結果論であり、理論的に導かれた数字ではないわけです。とはいえ、この辺りに人間の生物的限界があるのも確だといいます。


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 現在、100歳以上の人は日本だけでも6万人を超えているのに、110歳以上の人となると全世界で100人もいません。

 100歳と110歳の間には想像以上に大きな壁があることが分かります。まして120歳となると、世界史上公式に認められたのはカルマンさんしかいません。


摂取カロリーを減らすと長寿遺伝子が活性化

 最近、“長寿遺伝子”という言葉をよく聞きます。「サーチュイン」と呼ばれる遺伝子で、これが活性化すると生物の寿命が延びるといいます。活性化させる方法は、ずばり摂取カロリーを減らすことです。

 「NAD+(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)というサーチュインを活性化させる因子があり、このNAD+はたくさん食べていると減り、逆に食べる量を減らすと増えると言われています。


サーチュイン遺伝子


 実際、ハエやマウスは摂取カロリーを減らすと寿命が延びます。しかし残念ながら、より人間に近いサルの研究では効果が確認されませんでした。米国の国立老化研究所の研究によると、摂取カロリーを20%減らしたサルは生活習慣病になるリスクは減ったものの、肝心の寿命には差が見られなかったのです。

 一方でウェルナー症候群やブルーム症候群など、「早期老化症」と呼ばれる遺伝病があります。これは文字通り早く老ける病気で、思春期を過ぎると一気に老化の速度が上がり、50歳くらいですっかり老人になって死んでしまうといいます。

 普通に生活していると、1日で50万カ所くらいDNAに傷がつきますが、ほとんど修復されます。早期老化症の人は、このDNAの傷を治す修復遺伝子に異常があることが分かっています。

 顔や手に比べると、日光に当たらない背中やお尻の肌は白いだけでなく、シワやシミも少なく、これは紫外線にあまり当たらず、皮膚細胞のDNAが壊されないためです。

 DNAの中でも特に構造が不安定で、切れたり絡まったりしやすい「リボソームRNA遺伝子」(rDNA)という部分があり、サーチュイン遺伝子がこのrDNAを守ることで寿命を保っているというメカニズムを確認されています。


染色体の“テロメア”の長さも寿命を決める

 染色体の両端にテロメアという部分があり、細胞が分裂する度に短くなっていきます。長さが半分くらいになると細胞の老化が始まり、分裂する能力を失っていきます。

 多くの細胞は老化して、死すべき運命にあります。何回も分裂していくと、がん抑制遺伝子が壊れて細胞ががん化してしまうこともあります。がんになる前に、古くなった細胞には死んでもらう必要があり、これが“細胞の老化”で、赤ん坊にも見られる現象です。

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幹細胞が細胞分裂すると、幹細胞と分化した(幹細胞でない)細胞ができる。幹細胞は、サーチュインの不活性化によってリボソームRNA遺伝子(rDNA)が不安定化すると、老化が起こる。一方、分化してできた細胞は、染色体の両端にあるテロメアの長さが短縮することによって、老化が進む。


 中には何回分裂してもテロメアがあまり短くならない細胞があり、赤血球やリンパ球を作る造血幹細胞など、新しい細胞を生みだす役割を持つ幹細胞です。

 しかし幹細胞も不老不死ではなく、長い時間のうちに少しずつDNAが壊れ、不純物がたまり、機能が衰えていきます。

 ある程度、ダメージがたまった時点で老化のスイッチが入り、この幹細胞の老化こそが個体の寿命に強くかかわっていると考えられます。つまり、幹細胞の寿命が我々の寿命と言えます。


長生きするための5つのコツとは?

 では分子生物学的に老化を遅らせ、少しでも長生きするにはどうすればいいのでしょうか? 

1. 病気にならない

 戦前は伝染病で多くの人が命を落としたし、高齢者は免疫力が衰えることで肺炎などを起こしやすい。脳卒中や心臓病も生活習慣病が背景にあることが多い。まずは、病気にならないように注意することが基本です。

2. DNAに傷をつけない

 老化を防ぐためには、できるだけDNAに傷をつけないようにします。紫外線、放射線、タバコ、活性酸素などはDNAを破壊するので、紫外線対策や禁煙を心がけ、ビタミンCやビタミンEなど抗酸化成分を積極的にとるようにします。

3. ストレスをためない

 過度のストレスはDNA修復酵素の活性を下げます。アドレナリンの分泌によって活性酸素が増え、生活習慣病にもなりやすくなります。ストレスを感じずに生活することは不可能ですが、過度にならないように上手に解消します。

4. 適度な運動

 運動は筋肉、心臓、血管の機能を高めるとともに、がんをはじめとした多くの病気の発症リスクを下げることも確認されています。

5. 食べすぎない

 まだ霊長類で確認されてはいませんが、理論的には摂取カロリーを減らせば長寿遺伝子サーチュインが活性化するはずです。また、肥満は生活習慣病につながち、糖尿病や高血圧といった生活習慣病は老化を進め、確実に寿命を縮めることが分かっています。


 死は必ずやって来ますが、努力次第でその時期を遅らせることは十分可能です。体にいい生活習慣を心がけ、与えられた寿命を縮めることなく、きっちり全うしましょう。

(Nikkei Goodayより)
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