自動車の運転に潜む急病リスク

 大阪・梅田の号交差点で乗用車が暴走して2人が死亡し、1人が重体、8人が重軽傷を負った事故で、司法解剖の結果、車を運転していた男性の死因が大動脈が破れたことによる病死だったことがわかりました。

 急病による事故は少なくありません。交通事故総合分析センターと日本自動車工業会の調べでは、2012年に全国で起きた交通人身事故のうち、運転者の発作・急病によるものは254件。全件数の0.04%ですが、それ以外の事故と比べて死者が出る割合が高く、心疾患は年に20件前後、脳血管疾患は50件前後あるといいます。年齢が上がるに従って脳血管疾患が多くなる傾向にあります。

 今回の事故で車を運転していた大橋篤さんの死因は、大動脈解離による心タンポナーデと判明しました。脳に流れる血液が急激に減って意識を失うことがあるといい、大動脈解離を発症すると胸や背中に引き裂かれるような激しい痛みを感じるといいます。

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 事故と病気の関係に詳しい滋賀医科大の一杉正仁教授(法医学)によると、脳に送られる血液が減るため、正常な思考や判断がしづらくなり「胸に違和感があったり背中が痛んだりするなど何らかの前兆を感じるはずで、自覚症状があれば運転を続けないことが重要だ」と指摘します。

 近畿大医学部の谷口貢講師(循環器内科)は「運転中に異変を感じたら路肩に車を止め、すぐに救急車を呼んでほしい」と話しています。

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 財団法人交通事故総合分析センター「四輪運転者の発作、急病による交通事故発生状況」2011年


発症するリスクを減らには

 国立循環器病研究センター血管外科の湊谷謙司部長によると、血管に負担がかかって壁が裂けることを防ぐため、高血圧にならないようにすることが重要だといいます。すでに血圧が高い場合は、塩分の摂取を控えたり、降圧薬を服用したりすることで対応できます。


自動ブレーキなら防げたか?

 国土交通省によると、自動ブレーキ装着車の国内向け生産台数は約52万台です。自動ブレーキがあれば今回のような事故は防げたのでしょうか。

 日産自動車はほぼすべての車種で採用。人や車との衝突の恐れを感知するとブザーなどで警告し、緊急ブレーキが作動するが、広報担当者は「天候や路面状況によって作動しない場合もある」。トヨタ自動車は12車種で衝突回避支援システムを採用。自動ブレーキや車線のはみ出しを防ぐ機能がある。広報担当者は「必ず衝突を回避できるわけではない」と話しています。

 自動車評論家の国沢光宏氏は「現在販売されている自動ブレーキの仕組みでは、ブレーキが作動しても運転手がアクセルを踏み込めば、機械は運転手の意思だと判断してアクセルを優先する。今回のような事故は防げないと考えられる」と指摘。「突然死はどの年代でもありうる。病気による暴走事故を前提にした自動ブレーキの開発を急ぐ必要がある」といいます。

(Asahi Digitalより)

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※ 心タンポナーデとは、何らかの原因で心のう液が大量に、あるいは急速に増加して貯留してしまったために、心のう内圧が上昇し心臓が十分に拡張することができない状態、言い換えれば心臓が周囲の液体(心のう液)で押さえ込まれたような状態を指します。その結果、心臓はポンプとして機能できなくなり、急速にショック状態(血圧が低下するために循環不全や意識障害を引き起こすこと)となる、緊急を要する疾患です。進行すると急速に死に至ります。そのため緊急入院の上(または救急外来で)、心のう液が貯留しているスペースに向かって胸壁から針を刺して心のう液を排液し、時に一時的に柔らかなチューブを挿入する治療(心のう穿刺、心のうドレナージ)を行い、ショック状態から救う必要があります。貯留している心のう液は元々あった心のう液が増加する場合と心臓が破れるなどして血液が貯留する場合などがあります。

(慶應義塾大学病院 医療・健康情報サイトより)
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