肥満の原因は食べ物だけでないことが明らかに!

 現代人にとって、肥満の状態や血糖値の異常は健康における大きな関心事となっており、さまざまな対応策が広く考えられています。その方法で最もよく知られているのが食事制限による栄養管理ですが、実はその方法は必ずしも万能ではなく、人によっては正反対の結果が生まれることが明らかにされました。同じものを食べても太る人とそうでない人がいることがわかったのですが、その背景には、それぞれの人に固有のある要因が隠されているようです。


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食べ物と体の反応を詳細に調査

 医師であるSaleyha Ashanさんは、世の中の多くの人と同じく自身の健康管理に注意を払っているそうです。常に体重を適正に保つことを彼女が心がけているわけは、美意識のためというよりもむしろ健康に人生を送るために必要だからといいます。

 持病があり、2型糖尿病の家系を持つAshanさんは、普段から食べるものに気を遣って健康管理を心がけているとのこと。しかし、好きなものを好きなだけ食べても全く太ったりしない友人を見て「私たちは『ダイエットとはどういうものか』について間違った知識を持っていたのではないか」と考えたようです。

 2015年末、Ashanさんはワイツマン科学研究所の研究チームが実施する研究に加わるため、イスラエルを訪れました。そこでは、1000名の被験者を対象にした研究が行われており、文字どおり1分ごとに体の状態をモニタリングすることで、食べ物が体に与える影響が詳細に調査されていたとのことです。

 人が何かを食べると、摂取された食べ物は体内で消化されて糖となり、血液によって体内に送り出されます。この糖の値が「血糖値」なのですが、健康を語る上においては「血糖値の上昇と下降のスピード」が大きな意味を持っています。体内で血糖値が急激に上昇すると、これを抑制するためのホルモン「インシュリン」が分泌されます。インシュリンは脂肪の合成を促進するほか、体内の脂肪組織に対して糖の取り込みを促すなどの働きを持っているため、体内に脂肪が蓄積されることになります。

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 脂肪を必要以上にためないためには、血糖値の上昇を緩やかにすることが大切であり、そのための指標として「GI値(グリセミック指数)」が提唱されています。GI値の低い食材は血糖値の上昇を抑えるため、インシュリンの分泌が起こりにくくなって脂肪が合成されにくくなる、というのが論理の大まかな流れです。

 しかし、Ashanさんが加わった研究チームによると、この論理はそれほど単純なものではないとのこと。GI値は確かに重要な指標にはなり得るものの、その実態は人によって大きく左右されることが実験の結果から明らかにされていきます。


同じものを食べても、人によって結果は正反対になるという結果が明らかに

 研究に加わったAshanさんは身体検査を受けたのですが、それに加えて血中のグルコース値を測定するための装置を皮下に埋め込まれました。この装置を使って血液の状態を事細かにモニタリングしながら、Ashanさんは6日間にわたって特別の食事プログラムを取り入れた日程をこなすことになりました。Ashanさんはもう1人の女性、Leilaさんとチームを組み、日々の生活の中で全く同じ食事をとりながら6日間を過ごしました。

 約1週間の調査が終了し、得られたデータを比べると、なんと全く同じ食事をとっていたにもかかわらず、2人の血液の状態は実に対照的なものであったことがわかりました。例えば、Ashanさんにとって「パスタ」は血中のグルコース値を上昇させる悪い食べ物だったのですが、一方のLeilaさんにとっては問題のない良い食べ物だったとのこと。逆に、ヨーグルトはLeilaさんにとって悪い食べ物だったのが、Ashanさんにとっては良い食べ物だったりと、2人の反応はまさに「正反対」と言えるものだったとのことです。この様子からは、「GI値の高い/低い食べ物」に対する反応は誰についても同じ普遍的なものではないという、一般的な理解を超える実態が判明しています。


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 その違いの原因は、2人の「腸」の中に存在しているようです。両者は同じ食事をとるのと同時に、日々の排せつ物を研究チームに提出していました。研究者は2人の排せつ物に含まれるバクテリアや細菌を詳細に分析。すると、両者の腸内に存在している細菌などの状態が、全く異なることも明らかになってきました。

 人間は食べたものを胃で溶かし、小腸から大腸へと流す間に消化して栄養素を体内に吸収します。この時に食物の分解を行うのが腸の中に住んでいる無数の細菌やバクテリアです。これらの細菌類は腸の中でそれぞれの「コミュニティ」を形成しており、近年はそのバラエティ豊かな組成の様子をもとに「腸内フローラ」という呼び方も良く知られるようになっています。

 そして、この腸内フローラを形成する細菌は、食べ物に対する体の反応すらも変えてしまう働きがあることが次第にわかってきました。研究チームは、他の何百人という被験者のデータを集め、体内の細菌の様子と血糖値の変化データを照らし合わせることで、腸内の細菌は食べ物に対する血糖値の変化における重要な要素となることを解き明かそうとしています。


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 この研究が進むと、それぞれの人にとって何が「良い食べ物」で、何が「悪い食べ物」であるのかが簡単にわかるようになり、それぞれの人が自分にとって正しい食べ物を把握できるようになるとのこと。そうすることで、日々の健康管理やダイエットはもちろん、糖尿病などの病気に苦しむ人々にとって画期的な治療方法が考案されることにもつながる可能性を秘めています。さらに、研究チームは「腸内フローラ」を人為的に置き換える研究も視野に入れているとのこと。これが成功すると「人々は自分の好きなものをいくら食べても健康に被害を受けない」という日がやってくるのかもしれません。

 もちろん、複雑に絡み合った人体の仕組みを容易に組み替えるのはそう簡単なことではなく、時には危険を伴うことも想像に難くはありません。しかし、このような事実が徐々に明らかになることで、これまでは見ることができなかった希望の光が見えつつあるのは間違いなさそうです。

(BBC News―Gigazineより)
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