1日15分のウォーキングで寿命が3年延長!

座っている時間が長い人ほど、がんになりやすい

 最近、セデンタリー(Sedentary)という言葉を耳にする機会が少しずつ増えています。意味は座りっぱなしで体を動かさないことで、運動不足というだけでなく、長時間じっとしている状態を指します。現代人には特に珍しくない状態ですが、最近は座りっぱなしが寿命を縮めるといわれ、注目されています。

 セデンタリー、すなわち動かない生活は、タバコと同じくらい体に悪く、がんや心血管障害など命にかかわる病気の原因になることがわかってきました。2012年にWHO(世界保健機関)は、1日10時間以上座っている人は4時間以下の人に比べて病気になるリスクが40%も高くなると発表しています。


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 これとは別に、406万8437人を対象に、がんとセデンタリーの関係を調べた研究があります。それによると、セデンタリーが1日2時間増えるごとに、大腸がんの発症リスクが8%ずつ、肺がんの発症リスクが6%ずつ高くなります。

 運動不足が健康によくないのはもちろんですが、それ以上に悪いのは「長時間じっとしている生活」です。血行が悪くなること、交感神経の緊張、エネルギー消費の低下が、セデンタリーの問題だといいます。

 とはいえ、仕事で毎日朝から晩までパソコンとにらめっこしなければならない人も少なくありません。セデンタリーの時間を長くしないため、2時間に1回は席を立ち、手足を動かすことを心がけます。

 米国シリコンバレー企業の中には、この数年、立ったまま仕事ができるスタンディングデスクの導入が流行しており、家具販売店も高さを調整できる自動昇降スタンディングデスクなどを発売して話題を呼びました。その動きは日本にも少しずつ波及してきています。会社では、いずれ立って仕事をするようになるかもしれません。

 糖尿病などの生活習慣病を引き起こす「肥満」もセデンタリーと深い関係があります。米国のNHANES(全国健康栄養調査)を解析した研究から興味深い事実がわかりました。

 1988年から2010年にかけて、米国では年0.37%ずつ平均BMIが増え続けています。ところが意外にも、この22年間で米国人の摂取カロリーはほとんど増えていません。変わったのは、体を動かす時間です。22年前に比べて体を動かす習慣がないセデンタリーの人は、女性が19.1%から51.7%へ、男性が11.4%から43.5%へと急増していました。

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 同じ研究から、摂取カロリーが同じくらいでも、太っている人は座っている時間が長いことも確認されました。きちんとした運動をしなくても、歩く機会を増やすなど、日常の中でアクティブに動いてセデンタリーの時間を減らすだけでも肥満を防ぐ効果があるといいます。


1日15分の運動、「意識しながら」で効果アップ

 もちろん、できればしっかり運動するに越したことはありません。運動は単に肥満を防ぐだけではなく、高血圧や糖尿病といった生活習慣病、がん、うつ病、認知症。これらのリスクが、すべて運動によって低くなるといいます。

 かつて有酸素運動は30分以上続けないと意味がないと言われたこともありましたが、台湾の国家衛生研究院が41万6175人を対象にした調査から、1日15分でも大きな効果があることがわかっています。


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 ウオーキングなど中程度の運動を毎日15分する人は、まったく運動しない人に比べて「病気による死亡率」が14%減り、寿命が3年延び、さらに1日90分までは、運動時間が15分増えるごとに死亡率が4%ずつ減り、毎日90分運動する人は運動しない人に比べて死亡率が35%も低かったそうです。運動で寿命が延びることを医学的に示唆した研究です。

 忙しくてスポーツクラブに通う時間が取れないという人も、1日15分のウオーキングならハードルは低いでしょう。2回に分けると効果があります。

 家から駅まで速歩きで8分なら、その往復だけでも1日16分のウオーキングになります。なお通勤ウオーキングをするときは、「運動している!」と強く意識します。面白いことに、「運動している」「体にいいことをしている」と意識して運動すると、効果が高まる、という研究もあります。

 ホテルの室内清掃作業員を2つのグループに分け、一方にだけ「掃除やベッドメイキングも運動です」と教えました。同じ作業をしていたにもかかわらず、そう教えられたグループだけ1カ月後に平均体重が1.5kg減り、血圧や血糖値も下がりました。どうせ運動するなら、「これは効く」と意識して行ったほうが、断然お得というわけです。

 細胞の中にあるミトコンドリアとの関係から、運動不足は身体の老化を進めることもわかっています。ミトコンドリアは酸素を使ってATP(アデノシン三リン酸)という細胞を動かすためのエネルギーを作り出しますが、運動不足になると細胞内でATPが余ります。すると、ミトコンドリアから電子が漏れ、酸素と反応して活性酸素になります。

 ATPのニーズが減ることでミトコンドリアの数も減り、質も悪くなり、老朽化した質の悪いミトコンドリアは、より多くの活性酸素を発生させて身体の老化を進めてしまいます。


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運動のアンチエイジング効果とは?

 一方、運動するとATPが消費されます。新たに作る必要が出てきて、ミトコンドリアの新陳代謝が盛んになります。ジョギングやウオーキングといった有酸素運動をすると酸素の消費が多くなり、一時的に活性酸素も増えますが、ミトコンドリアの質が良くなることで、結果的に活性酸素の排出量が大幅に減ります。

 年を取るとともにミトコンドリアの質も低下していきますが、運動によってそれを抑えられるという研究結果もあります。カナダのマクマスター大学で行われた研究によると、日常的に運動する習慣を持つ平均70歳の高齢者たちは、ミトコンドリアの機能が若者とほとんど変わらなかったそうです。

 運動の効果はやせて健康になるだけではありません。ミトコンドリアの質と量を保ち、老化を抑えることにも直結しています。

 しっかり運動する時間が取れなければ、1日15分。エレベーターをやめて階段を登る。たくさん歩くことを心がけるなど、生活の中で少しでも体を動かすことから始めてみましょう。

(日経ビジネスより)
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