「30歳若返りのクスリ」 ハーバード大が世紀の大発見!

もう怪しい若返り法には騙されない!

 私たちが年をとったとき、人間の寿命はどこまで延びているのでしょうか。不老長寿は実現しているのでしょうか。

 科学的な裏付けのない「アンチエイジング」と称する怪しげな健康法やサプリがは溢れています。これまで私たちの多くは、半分騙されていることを知りつつも、ちょっとでも若さを保つために涙ぐましい努力を続けてきました。

 しかし、そんな時代はもう終わりそうです。ハーバード大のデビッド・シンクレア教授を中心とするグループの科学的な研究によって、30年後には、先進国の平均寿命が100歳になり、開発されるであろう若返り薬によって30歳以上の若さに戻すことができるといいます。



 以下、米国ボストンに住むシンクレア教授にプレジデント誌がインタビューした「若返り」技術の全貌です。

 私は4歳のときから、老化に強い関心をもっていました。親が亡くなり、自分もいずれは死ぬと考えたことで強いショックを受けました。どうしても脳裏からそのショックを払拭できませんでした。昔から生物学には常に関心を抱いていて、オーストラリア・シドニーの大学では分子生物学を学びました。1987年のことです。

 ある日友人たちとトランプをしていたときに若いことはすばらしいという話になりました。私が「いつか人間は150歳まで生きるようになる」と言ったら、友人たちは「そんなことはありえない」と言ったのです。私は遺伝学、幹細胞などの新しい研究を見ていると、新世界が来ると言い返しました。

 私が老化の研究を始めたときに感じたのは、私たちの次の世代から飛躍的に寿命が延びるのではないかということでした。私たちの世代が最後の短命世代になってしまう懸念をもち、私は自分が生きている間に、長寿を成功させてやると決意したのです。



 91年私はMIT(マサチューセッツ工科大学)のレオナルド・ギャランテ教授に出会いました。彼は酵母(学名Saccharomyces cerevisiae )の老化のメカニズムについて研究を始めたばかりでした。専門用語ではサッカロマイセス・セレヴィシエといいます。酵母というとても単純な細胞で老化の研究をするメリットは多く、私もすでに酵母で研究をしていましたが、ギャランテ教授はとても頭が良く、この教授のもとで研究したいと思いました。

 そこで彼に「何が何でも行く」という内容の手紙を書きました。すると「こちらには払える資金がないから、フェローシップ(奨学金)を見つけたら来てもいい」という返事でした。やっとの思いでフェローシップを見つけ、なけなしの貯金をすべて使ってシドニーからボストンまで飛びました。95年のことです。

 レオナルド・ギャランテ教授は、「老化はいずれ“病気”に分類されるようになり、近い将来に“抗老化薬”は開発できる」と信じる分子生物学を起点にしたアンチエイジング研究の第一人者だ。酵母の寿命を制御するサーチュイン遺伝子の一つ(Sir2)を発見したことで知られている。人間の老化を遅らせる薬を開発する会社を99年に設立し、資金調達額は合計で4900万ドルに達したという。


みんなにクレイジーと言われた!

 MITの4年間で「酵母の老化」について研究をしました。酵母は永久に生きると思う人も多いのですが、実際は1週間で死にます。ギャランテ教授と一緒に、酵母の老化のメカニズムを初めて解明しました。染色体がもつれて死ぬのです。それが老化をコントロールするサーチュイン遺伝子の発見につながったのです。寿命延長の効果があるとされているレスベラトロールの登場は約8年後です。

 当初、酵母の研究は、同僚たちにクレイジーだと言われました。オーストラリアの母親に電話して「大きな間違いをした。みんなにクレイジーだと言われている。もうオーストラリアに帰る」と泣きつきました。すると母親は先見の明があったのか「もう少し頑張ってごらん。きっとうまくいくわよ」と言ってくれました。しばらくすると数週間ごとに大発見が続くようになりました。とてもわくわくする研究生活を過ごすことができました。

 そのあとコロンビア大学からもオファーが来ましたが、ボストンに残りたかったので、ハーバード大を選び、国籍もアメリカに変えました。ハーバード大では(長寿遺伝子の一つである)サーチュイン遺伝子をヒトの細胞で研究し始めたのです。その研究のために私のラボがつくられました。(サーチュイン遺伝子を活性化するとされる)レスベラトロールの研究もまだ続けています。

 その分子が重要なのは、一つは老化を遅らせる効果があることです。もう一つは今まさに臨床試験が行われており、4~5年すれば、老化を遅らせる薬ができる可能性が非常に高いことです。2005年にSirtrisというベンチャー企業を立ち上げましたが、それは08年に7億2000万ドルでグラクソ・スミスクライン社に買収されました。同社は10億ドルを投資して研究し、今年(2015年)の終わりまでには大規模な臨床試験が行われます。

 また、私たちは老化を逆行させる方法を理解するために幹細胞を研究しています。女性の卵巣から取り出した卵巣幹細胞を培養して何百万個もの卵子をつくることができます。今、女性が健康な赤ちゃんを産めるように、また遺伝病をいかにして治すかについて研究しています。OvaScienceというベンチャー企業を立ち上げ、新しい生殖医療や女性の卵子の老化を逆行させる研究をしています。今この企業は12億ドルの価値があります。


60歳の体が30歳になる

 今までは卵子の老化は止められないといわれていましたが、これからは逆行させることができます。まず女性から卵子を数個取ります。幹細胞から、細胞のエネルギー源であるミトコンドリアを取り出し、それを精子と一緒に卵子に注入します。そうするとはるかに健康な受精卵ができると考えています。これはカナダ、中東、イギリスなど多くの国・地域で行われており、日本でも始まっています。

 老女から古い卵子を取り出して、それを若返らせることもできます。そうするとその卵子と精子で子供をつくることができます。さらにDNAを改変することができれば、疾患がゼロの受精卵をつくることができます。これまで空想小説の世界だと考えられてきたことが現実になります。

 今研究しているもうひとつの分子は非常に新しい分子で、レスベラトロールよりも寿命を延ばす能力が高いものです。NAD(ニコチンアミド・アデニン・ジヌクレオチドの略で、サーチュイン遺伝子を活性化させる化学物質)という物質のレベルを上げる役割をします。この研究は現在、今井眞一郎氏(現ワシントン大学セントルイス校)と協力して行っています。

 NADは老化とともに減少します。私は今45歳ですが、NADは若いときの半分になっています。ですから、NADのレベルを上げると若返ると考えますが、今井氏も同じ考えです。我々はMetrobiotechというベンチャー企業を立ち上げ、マウスですでに若返りに成功しています。臨床試験も始まる予定です。

 NADのレベルを上げると体全体が若返ります。これをマウスに投与すると、人間で言えば60歳の体が30歳の体になります。クレイジーに聞こえますが、最も権威のある科学誌の一つCellに掲載されました。

 さらにこのラボで研究しているのはバイオインフォマティクス(生命情報科学。遺伝子やタンパク質のビッグデータをコンピュータにより分析する研究分野)です。

ヒトとサルとの比較から、すでにいくつかの新しい遺伝子を発見しています。私のラボには20人いますが、シドニーには10人、さきほど言ったベンチャー企業では何百人もの人が研究しています。ですから、毎日何かが起きています。

 若返りをするには何か代償を払わなければならないと考える人もいますが、それはないと思います。未だ明らかにされていないことが多いので今の段階では、完全に若返るということはありません。ですが、体がまるで若返ったように行動させるスイッチが複数見つかっていますし、将来もっと完全な若返りができるようになると思います。筋肉の若返りについては1年間研究しましたが、筋肉の老化を完全に逆行させることができました。それはそれほど難しいことではありません。


どっちのマウスが若く見えるか



 マウスでは老化を早めたり、遅らせたりすることができます。このマウス(写真を参照)を見てください。AとBでどちらが若いと思いますか?

 実は同年齢です。DNAはまったく同じですが、Aのマウスは老化を早めたのです。どの遺伝子のスイッチをオンにして、どれをオフにしたら老化を早めることができるかわかっています。現在は、老化を逆行させる、つまり若返らせようとしているところです。

 元々老化はDNAの損傷が原因であると考えられていますが、このマウスに起こっていることはDNAに損傷を受けたことによるものではないと我々は考えています。我々が考える老化の原因は、「細胞がDNAをどう読むか」が変化してしまうことです。いわゆるエピジェネティクス(環境などの条件が変わることで、様々な遺伝子のオン・オフが調節されること)です。

 例えば、自分たちが若いときに、完璧なコックさん(=DNAを正しく読む細胞)の料理をおいしく食べます。それが年をとるにつれて、そのコックさんも年をとり、同じようにつくることができなくなります。そうすると次のコックさん(=代わりに生まれた細胞)がつくることになりますが、完璧なコックさんが書き残したレシピ(=老化しないDNAの読み方)に従えば、同じようにつくることができます。細胞がDNAを正しく読めば、細胞が若返るということです。


寿命は簡単に20年延びる

 10年前にはマウスを若返らせることは難しかったのですが、今は簡単です。今若返りのために使うことができる分子はかなりあります。例えばレスベラトロールやNAD以外では、ラパマイシン、メトホルミン、ニコチンアミドモノヌクレオチドなど、老化を遅らせる分子はたくさんあります。今それがヒトにも効果があることを証明したいと思っています。またアルツハイマー病や二型糖尿病は、老化と深く結びついています。30歳とか40歳になったときに、こういう分子を注入すると老化だけでなく病気に対しても体が防衛してくれます。7つのサーチュイン遺伝子のスイッチをオンにすると、老化を遅らせたり、アルツハイマー病の発症を遅らせたりすることができることは動物では証明できています。今それがヒトに効果があるかどうかテストしなければなりません。私の父親は75歳ですが、先ほどの分子を注入しています。非常に健康で、強いです。私よりも健康です(笑)。自分の体を使って人体実験をするのはオーストラリアの伝統です。ノーベル賞を受賞したバリー・マーシャル医師は、胃で悪さをするバクテリア(ピロリ菌)を発見したときに、自分の体にはそのバクテリアがいなかったので、自らバクテリアを飲み、わざわざ感染して、抗生物質を飲んで治療し、研究材料としました。同じということではありませんが、私の父親も12年も前に自ら進んで実験を引き受けてくれました。オーストラリア人は勇気があるというか、クレイジーなところがありますね。

 私は、老化には2つのステージがあると考えています。ステージ1は80歳までの期間です。ヒトは中年を過ぎると、細胞の核とミトコンドリアにあるDNAが正しいコミュニケーションを取れなくなっていることがわかっています。それが原因でDNAの読みが変わってしまい、老化が進むのです。これについては、我々のアプローチによって若返りが可能と考えています。もっと年をとるとステージ2となり、ミトコンドリアDNAの突然変異が起きたり、不完全なかたちのタンパク質が増えたり、寿命と関係するテロメア(細胞が生まれ変わるたびに減少していく遺伝子)にもいろいろなことが起こり、後戻りは難しくなります。

 私が力を注ぎたいのは、80歳や90歳になるもっと前に、ヒトを若返らせることです。あまりにも年をとってから若返らせようとするのは、中年のときと比べるとはるかに難しいのです。現段階の技術では不老不死にはたどり着けませんが、寿命は簡単に20年くらい延びるでしょう。

( PRESIDENT Onlineより転載)
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