おお永遠、そは雷の言葉(BWV20)

 三位一体主日後第1主日に聴くカンタータは、コラール・カンタータ年巻の冒頭を飾るエポックメイキングな作品です。1724.6.11に初演されたこの作品をもって、ライプツィヒでのコラール・カンタータ年巻が開始されました。

 コラール・カンタータは、冒頭にコラールの歌詞やメロディを使った大規模な合唱曲が置かれ、最後には同じコラールが4声体で締めくくられます。各曲がコラールを基礎として使うこの様式の作品には、名作が集まっています。

 今回から11月末まで1724年に作られた曲を順番に聴いていきたいと思います。



 歌詞の底本はヨハン・リストの作詞のコラール「おお永遠、そは雷の言葉」で、カンタータは牧師の説教を挟んで2つの部分からなり、第1部は無限に続くかと思われる終末の責め苦や災と、それに対する恐れ、惑いを取り扱い、審判のラッパで始まる第2部では現世の超克が勧められ、財貨への執着が戒められます。


 シギスヴァルト・クイケン指揮、ラ・プティット・バンド、シリ・ソーンシル(S)、ペトラ・ノスカイオヴァ(A)、マーカス・ウルマン(T)、ヤン・ファン・デル・クラッベン(B)の演奏でお聴きください。




おお永遠、そは雷の言葉(BWV20)

第1部

1 .合唱

O Ewigkeit, du Donnerwort,

おお永遠、御身雷の言葉、

O Schwert, das durch die Seele bohrt,

おお魂をつらぬきえぐる剣、

O Anfang sonder Ende!

おお終りなき始まりよ!

O Ewigkeit, Zeit ohne Zeit,

おお永遠、時なき時よ、

Ich weiß vor großer Traurigkeit

この身は悲愁のあまり

Nicht, wo ich mich hinwende.

知らぬ、いずかたに向かえばよいものか。

Mein ganz erschrocken Herz erbebt,

わが怯えおののく心は震え、

Dass mir die Zung am Gaumen klebt.

舌は顎にへばりつく。

2 .レチタティーヴォ(テノール)

Kein Unglück ist in aller Welt zu finden,

どんな不幸も世にあまねく見つからぬ、

Das ewig dauernd sei:

永遠に続いてゆくものは。

Es muss doch endlich mit der Zeit einmal verschwinden.

それはしまいに時と共にいずれは消え去るもの。

Ach! aber ach! die Pein der Ewigkeit hat nur kein Ziel;

ああ!それが ああ!永遠の責苦には果てがない。

Sie treibet fort und fort ihr Marterspiel,

いついつまでも責め苛んでやまぬ。

Ja, wie selbst Jesus spricht,

しかり、イエス御みずから言い給うごとく、

Aus ihr ist kein Erlösung nicht.

それからの救いはありはせぬのだ。

3 .アリア(テノール)

Ewigkeit, du machst mir bange,

永遠よ。御身はこの身を不安で苛む、

Ewig, ewig ist zu lange!

永遠。永遠はあまりに長い!

Ach, hier gilt fürwahr kein Scherz.

ああ、ここではまことにふざけは利かぬ。

Flammen, die auf ewig brennen,

永遠に燃える炎とは、

Ist kein Feuer gleich zu nennen;

どんな火とて同じと呼べぬ。

Es erschrickt und bebt mein Herz,

わが心はおののき震える、

Wenn ich diese Pein bedenke

この責め苦を思いみて

Und den Sinn zur Höllen lenke.

思いを陰府に向ける時。

4 .レチタティーヴォ(バス)

Gesetzt, es dau'rte der Verdammten Qual

もし仮に、断罪された者達の苦悶の続く

So viele Jahr, als an der Zahl

年数が、その数

Auf Erden Gras, am Himmel Sterne wären;

地の草、天の星のようだとして。

Gesetzt, es sei die Pein so weit hinausgestellt,

もし仮に、責苦の止むまでが、

Als Menschen in der Welt

人間がこの世に

Von Anbeginn gewesen,

太初からいたほどだとして、

So wäre doch zuletzt

それでもやはりしまいには

Derselben Ziel und Maß gesetzt:

その果てと限りがある。

Sie müßte doch einmal aufhören.

やはりいずれは終らねばならぬであろう。

Nun aber, wenn du die Gefahr,

だがよいか、お前がこの危地に、

Verdammter! tausend Millionen Jahr

断罪された者よ!一億年ものあいだ

Mit allen Teufeln ausgestanden,

もろもろの悪魔にまじって耐えぬいたとしようとも、

So ist doch nie der Schluss vorhanden;

それでも決して終わりはないのだ。

Die Zeit, so niemand zählen kann,

だれ一人数えることあたわぬこの時は、

Fängt jeden Augenblick

一瞬また一瞬と、

Zu deiner Seelen ewgem Ungelück

お前の魂にとっては永遠の不幸にも、

Sich stets von neuem an.

たえず新たに始まるのだ。

5 .アリア(バス)

Gott ist gerecht in seinen Werken:

神は正しくあり給う、御業において。

 Auf kurze Sünden dieser Welt

 この世の短い罪に対し

 Hat er so lange Pein bestellt;

 その神がこれほど長い責苦を定め給うた。

 Ach wollte doch die Welt dies merken!

 ああ、世がこのことを胸に刻んでくれたなら!

 Kurz ist die Zeit, der Tod geschwind,

 時は短い、死は早い、

 Bedenke dies, o Menschenkind!

 思いみよこれを、おお人の子よ!

6 .アリア(アルト)

O Mensch, errette deine Seele,

おお人よ、救いなさい己れの魂を、

Entfliehe Satans Sklaverei

逃れなさいサタンへの隷属を、

Und mache dich von Sünden frei,

そして己を罪から解き放ちなさい。

Damit in jener Schwefelhöhle

それはあの硫黄の穴で

Der Tod, so die Verdammten plagt,

あの死、断罪された者達を苦しめ悩ますものが、

Nicht deine Seele ewig nagt.

魂を永遠に苛むことのないためです。

O Mensch, errette deine Seele!

おお人よ、救いなさい己れの魂を!

7 .コラール

Solang ein Gott im Himmel lebt

神たる御方が天に生き給い、

Und über alle Wolken schwebt,

たたなずく雲居のかなたに在す限り、

Wird solche Marter währen:

Esそのごとき責苦は続くであろう。

wird sie plagen Kält und Hitz,

その者らを苦しめるのは寒さに暑さ、

Angst, Hunger, Schrecken, Feu'r und Blitz

不安、空腹、恐怖、火に稲妻。

Und sie doch nicht verzehren.

それでも滅ぼし尽くすことはない。

Denn wird sich enden diese Pein,

この責苦が終るのは、

Wenn Gott nicht mehr wird ewig sein.

神が永遠たるをやめ給うた時のこと。

第2 部

8 .アリア(バス)

Wacht auf, wacht auf, verlornen Schafe,

目覚めよ、目覚めよ、失われた羊たち、

Ermuntert euch vom Sündenschlafe

己れを醒ませ、罪の眠りから、

Und bessert euer Leben bald!

そして改めよ生き様をただちに!

Wacht auf, eh die Posaune schallt,

目覚めよ、あのラッパが鳴り響かぬ間に、

Die euch mit Schrecken aus der Gruft

御身らを恐怖とともに墓穴から

Zum Richter aller Welt vor das Gerichte ruft!

全世界の裁き手の裁きへ呼び出すあの音が!

9 .レチタティーヴォ(アルト)

Verlass, o Mensch, die Wollust dieser Welt,

去るのです、おお人よ!この世の快楽を、

Pracht, Hoffart, Reichtum, Ehr und Geld;

栄華、高慢、富貴、栄誉に金銭を。

Bedenke doch

思いみるのです

In dieser Zeit annoch,

まだ今のうち、

生命の木がまだ緑なすうちに、

Was dir zu deinem Friede dienet!

何があなたの平安に役立つか。

Vielleicht ist dies der letzte Tag,

あるいはこれが最後の日なのです、

Kein Mensch weiß, wenn er sterben mag.

人は誰も知りません、いつ死ぬかなど。

Wie leicht, wie bald

なんとたやすく、なんとたちまち

Ist mancher tot und kalt!

多くの者が死んで冷たくなることか。

Man kann noch diese Nacht

あるいは今晩のうちにでも

Den Sarg vor deine Türe bringen.

枢があなたの戸口に運ばれるのです。

Drum sei vor allen Dingen

だから何より先に

Auf deiner Seelen Heil bedacht!

魂の救いに心を配るのです!

10.アリア(二重唱)アルト、テノール

O Menschenkind,

おお人の子よ、

Hör auf geschwind,

やめよただちに

Die Sünd und Welt zu lieben,

罪とこの世を愛することを。

Dass nicht die Pein,

けっして責苦が、

Wo Heulen und Zähnklappen sein,

うめきと歯ぎしりのある場所で、

Dich ewig mag betrüben!

お前を永遠に苦しめぬように!

Ach spiegle dich am reichen Mann,

ああ、映し見よ己れをあの金持ちに、

Der in der Qual

苦悶のなかで

Auch nicht einmal

ただほんの

Ein Tröpflein Wasser haben kann!

水ひとしずくももらえぬあの者に。

11 .コラール

O Ewigkeit, du Donnerwort,

おお永遠、御身雷の言葉、

O Schwert, das durch die Seele bohrt,

おお、魂をつらぬきえぐる剣

O Anfang sonder Ende!

おお、終りなき始まりよ!

O Ewigkeit, Zeit ohne Zeit,

おお永遠、時なき時よ、

Ich weiß vor großer Traurigkeit

この身は悲愁のあまり

Nicht, wo ich mich hinwende.

知らぬ、いずかたに向かえばよいものか。

Nimm du mich, wenn es dir gefällt,

御身こそこの身を受け入れ給え、御心にかなう時、

Herr Jesu, in dein Freudenzelt!

主イエスよ、御身の喜びの天幕へ!

                       対訳:松浦 純


ルカによる福音書 16,19-31

 「ある金持ちがいた。いつも紫の衣や柔らかい麻布を着て、毎日ぜいたくに遊び暮らしていた。この金持ちの門前に、ラザロというできものだらけの貧しい人が横たわり、その食卓から落ちる物で腹を満たしたいものだと思っていた。犬もやって来ては、そのできものをなめた。やがて、この貧しい人は死んで、天使たちによって宴席にいるアブラハムのすぐそばに連れて行かれた。金持ちも死んで葬られた。そして、金持ちは陰府でさいなまれながら目を上げると、宴席でアブラハムとそのすぐそばにいるラザロとが、はるかかなたに見えた。そこで、大声で言った。『父アブラハムよ、わたしを憐れんでください。ラザロをよこして、指先を水に浸し、わたしの舌を冷やさせてください。わたしはこの炎の中でもだえ苦しんでいます。』しかし、アブラハムは言った。『子よ、思い出してみるがよい。お前は生きている間に良いものをもらっていたが、ラザロは反対に悪いものをもらっていた。今は、ここで彼は慰められ、お前はもだえ苦しむのだ。そればかりか、わたしたちとお前たちの間には大きな淵があって、ここからお前たちの方へ渡ろうとしてもできないし、そこからわたしたちの方に越えて来ることもできない。』金持ちは言った。『父よ、ではお願いです。わたしの父親の家にラザロを遣わしてください。わたしには兄弟が五人います。あの者たちまで、こんな苦しい場所に来ることがないように、よく言い聞かせてください。』しかし、アブラハムは言った。『お前の兄弟たちにはモーセと預言者がいる。彼らに耳を傾けるがよい。』金持ちは言った。『いいえ、父アブラハムよ、もし、死んだ者の中からだれかが兄弟のところに行ってやれば、悔い改めるでしょう。』アブラハムは言った。『もし、モーセと預言者に耳を傾けないのなら、たとえ死者の中から生き返る者があっても、その言うことを聞き入れはしないだろう。』」

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