新しい場所で眠るとき、脳の半分は「起きて」いる?

 旅行先のホテルやキャンプ場、さらには友だちの部屋に泊まるといった状況だと、翌朝起きてもどこかスッキリせず、目もショボショボといった体験はありませんか? そうした状態だと、たとえ眠れずに寝返りを打ち続けた記憶がなかったとしても、翌日はひどく疲れを覚えるはずです。


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 実はこれ、人間のカラダに染みついた野生の習性が、簡単には断ち切れないことの現れかもしれません。普段と違う場所で寝ると、私たちの脳はサバイバルモードに入り、半分しかオフにならないといいます。このとき残りの半分は、寝ている間もいわば「起きた」状態です。この現象を解明したブラウン大学の研究チームによると、これは聞き慣れない物音が近づいてきたときにすぐに目を覚ますことができるよう、人間に備わっている習性のようです。この研究成果は、学術誌「Current Biology」に、4月21日付で発表されました。

 睡眠を研究する科学者たちは以前から、この「第一夜効果」(ファーストナイト・エフェクト:FNE)について、人間の通常の睡眠を妨げる要素として注目していましたが、その仕組みについてはこれまで完全には解明されていませんでした。そこで今回、睡眠を専門とする研究チームは、この謎の解明に乗り出し、高度な神経画像診断の技法を用いて、浅い睡眠状態にある脳を詳細に分析しました。


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脳の半球が半覚醒状態、周囲の物音に反応してしまう

 その結果、興味深いことに、浅く眠っている状態の脳では、睡眠中の活動パターンが左右非対称であることがわかりました。片方の半球が眠っている間、反対側の半球は活動を続けていたのです。比較的活発な半球も完全に覚醒しているわけではないのですが、眠っているほうと比べるとはるかに活性化していて、外部からの刺激にも反応するほどでした。

 この研究で、FNEの状況にある被験者は、「通常ではない」物音を聞かせるだけで、ハッと目を覚ましました。おそらく、ドアのきしむ音や動物の甲高い鳴き声でも同じ結果になるでしょう。大半の被験者では、この「夜間警備員」の役割を果たす脳の半球は左側に固定されていましたが、その理由はいまだに説明がついていません。


海を回遊するクジラやイルカの脳にも同様の機能が

 こうした睡眠のあり方は、ほかの動物にも認められるそうです。「海生哺乳類や一部の鳥では、こうした半球だけの睡眠が確認されています。つまり、片方が起き、もう片方だけが眠っている状態です」と、今回の研究論文の共同執筆者は声明で述べています。大海原を回遊するクジラやイルカの場合、睡眠中は外敵に狙われる危険が高まります。そのため、寝込みを襲われることがないよう、いっときに眠るのは脳の半分だけにしているわけです。私たち人間の脳にも、クジラやイルカが持つシステムのミニチュア版が仕込まれているのかもしれません。


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自宅以外で寝ることが多い人の脳はこの機能をオフにできるかも

 この新たな知見を得たことで、睡眠の研究者たちは、このメカニズムをオフにする方法を見つけられるのではないかと期待をかけています。これはおもに、仕事で自宅を留守にしがちで、いつも「新しい場所」で眠らざるを得ない人に向けた対策となります。しかしそうした人たちはすでにこの機能をオフにする能力を手にしている可能性もあるとのことです。人間の脳は非常に柔軟にできているといいます。

(Popular Science―Lifehackerより)
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