過去の病気ではない結核の怖さ

1日に54人が結核を発病し、6人が死亡している日本

 昭和初期、結核は国民病とも言われ、死亡率は高く、その状態は戦後まで続きました。しかし、治療薬の進歩に伴い結核患者は1950年以降に減少に転じ、それ以降は比較的低いレベルに抑えられてきました。

 しかし現在でも、世界の他の先進国と比べると、日本で新たに結核と診断される患者数は明らかに多いといいます。2014年に日本で新たに結核と診断された患者数は、人口10万人当たり15.4人でした。他の先進国をみると、英国が12.0、フランスが7.3、オーストラリアが5.4、ドイツが5.1、米国は2.8で、日本は、結核対策においては「中進国」にとどまっています。

 具体的な数字で見ると、2014年に国内で新たに結核と診断され保健所に報告された患者の数は1万9615人、結核による死者数は2099人でした。これは、1日当たり約54人が新たに結核を発病し、約6人が結核で死亡していたことを意味します。

 同年に登録された新たな結核患者の37.7%は80歳以上でした。一方で、0~14歳の小児の新たな患者は49人(0.2%)にとどまりました。また、新規診断患者の数が多かったのは、大阪市(10万人当たり36.8)、名古屋市(同23.2)、京都市(21.8)、堺市(21.5)、神戸市(21.5)、東京23区(21.2)でした。
 

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結核菌を吸い込んでも、健康な人なら感染しにくい。

 

健康な人であれば、通常は免疫で排除される

 結核は、結核菌の感染によって起こる病気です。肺結核患者の咳やくしゃみなどを通じて空気中に飛び散った結核菌を肺の奥まで吸いこむと感染する可能性があります。感染経路は、空気感染と飛沫感染です。ただし、健康な人であれば通常、吸い込んだ結核菌は免疫などにより排除され、感染しません。

 BCGワクチンの接種を受けていないために結核に対する免疫のない人や、免疫力が低下している人が結核菌を吸い込み、運悪く感染した場合、10~15%がその後1~2年のうちに発病します。発病しないまま、菌が休眠状態となって体内に留まる人もいます。

 加齢などにより免疫力が落ちたり、がんや糖尿病などの疾患になったりすると、潜んでいた結核菌が活動を始め、結核を発病することがあります。現在、高齢の患者が多いのは、結核が蔓延していた若い頃に結核菌に感染し、免疫機能の衰えと共に発病するケースが多いためです。ただし、結核菌が体内に留まっている人のうち、実際に発病するのは10~15%程度といわれています。

 結核は人から人へと感染するため、人口密度の高い大都市で、感染者も発症者も多い傾向が見られます。


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結核に感染するリスクは三段階

 結核菌に感染するリスクをもう少し詳しく見ると、感染リスクは患者周囲の空気中に存在していた結核菌の量と、その空間の中に留まっていた時間の長さによって決まります。

 感染の危険性が最も高いのは、結核菌を排出している患者と同じ空間にいた、免疫力が低下している免疫不全症などの患者や、BCGを受けていない乳幼児です。

 続いて感染しやすいのは濃厚接触者です。こちらは、患者が結核菌を排出していた期間に、換気の悪い狭い空間(個室内、車内など)に、患者と共に長期間、または何度も留まっていた人をいいます。

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 濃厚接触者より低い頻度、または短い時間、患者と共に過ごした非濃厚接触者にも、感染リスクはありますが、深刻ではないと考えられます。

 職場や学校などで結核患者が見つかった場合には、患者との接触の度合いを調査し、基本的には上記のように分類します。感染リスクが高いとみなされた接触者には検査を行い、必要に応じて結核治療薬の予防的な投与も実施します。


働き盛りの人は受診が遅れがち。長引く咳は要注意。

 結核菌は主に肺の内部で増えるため、咳、痰、発熱、呼吸困難など、風邪のような症状を引き起こしますが、肺以外の腎臓、リンパ節、骨、脳などにも影響が現れることがあります。

 咳や痰が2週間以上続いたり、倦怠感、発熱、寝汗が続いたり、原因不明の体重減少があったときには、周囲の人にうつさないためにも、早めに医療機関の受診が必要です。日本では、働き盛りの、感染性のある(排菌している)結核患者の約3人に1人は、受診が遅れる傾向が見られます。

 結核と似た症状を引き起こす病気としては、肺炎、非結核性抗酸菌症、肺がん、気管支拡張症、良性腫瘍などが挙げられます。気になる症状があれば、子供なら小児科、大人ならば内科または呼吸器内科を受診しましょう。


指示通りに半年間治療を受ければ、基本的には治る

 結核を発病したのに治療を受けなければ、約半数は死亡するといわれています。結核は、治療を受ければ基本的には治る病気ですが、近年、複数の治療薬が効かない耐性菌が見つかるなど、新たな問題も明らかになっています。

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 結核と診断された時点で、全身状態が悪い患者、症状が深刻な患者、周囲に感染させる危険性が高い患者には入院が指示されますが、そうでなければ、外来で処方を受けて、複数の治療薬を6カ月間服用することになります。

 治療開始後は、症状が消えても指示通りに服薬します。飲み忘れや自己判断による服薬中止は、薬剤耐性菌の出現につながります。日本では、結核患者の8割以上が標準治療で完治しますが、標準治療に含まれている最も効果が高い2剤に対する耐性を獲得した結核菌(多剤耐性菌)に感染すると、さまざまな治療を受けても、約半数しか完治できません。


BCGは有効だが効果は15年程度で失われる

 結核予防に、BCGワクチンの接種は有効です。予防接種は、生後3~6カ月の乳児に1回接種されています。生後1歳までのBCGワクチン接種は、小児の結核発症を52~74%程度減らすことが示されています。ただし、効果は15年程度で失われます。

 成人の場合には、免疫力を維持することが大切です。十分な睡眠、適度な運動、適切な栄養摂取により体調を管理し、結核発症を回避しましょう。

(日経Goodayより要約)
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