安息を楽しみ、心の喜びを欲せよ(BWV170)

 今日は三位一体主日後第6主日ですが、コラール年巻に作られたカンタータは現存しませんので、1726.7.28にライプツィヒで初演されたアルト独唱のソロ・カンタータを聴くことにします。コラールを持たないカンタータで、アリアとレシタティーヴォで構成されています。



 当日の福音書聖句は、イエスの山上の垂訓で、兄弟に腹を立てぬこと。敵対者と和解することを勧めています。テキストに使われたゲオルク・クリスティアン・レームスの歌詞はむしろ敵対者に対する攻撃に重点を置いており、和解の理念も展開を受けぬまま、現世否定へと転化されます。


 カウンター・テナーのダミアン・ギヨンが率いるル・バンケ・セレストの演奏会動画でお聴きください。ダミアン・ギヨンが指揮をしながら独唱をしています。




安息を楽しみ、心の喜びを欲せよ(BWV170)

1.アリア(アルト)
Vergnügte Ruh, beliebte Seelenlust,

満ち足りた安らぎよ、望ましい魂の快よ。

Dich kann man nicht bei Höllensünden,

あなたは地獄の罪のもとには見出せない、

Wohl aber Himmelseintracht finden;

天上の和合こそその住処。

Du stärkst allein die schwache Brust.

あなただけが、弱い胸を強めてくれる、

Drum sollen lauter Tugendgaben

それならば、徳の賜物だけが

In meinem Herzen Wohnung haben.

私の心に住みつきますように。

2.レチタティーヴォ(アルト)
Die Welt, das Sündenhaus,

この世は罪の家にして

Bricht nur in Höllenlieder aus

地獄の歌ばかりを高唱する。

Und sucht durch Hass und Neid

そして、憎しみと妬みにより、

Des Satans Bild an sich zu tragen.

サタンの姿を身に帯びようと努めるのです。

Ihr Mund ist voller Ottergift,

その口はまむしの毒に満ち、

Der oft die Unschuld tödlich trifft,

答なき者をしばしば死に至らしめ、

Und will allein von Racha sagen.

復讐だ!復讐だ!と言いたがります。

Gerechter Gott, wie weit

正しい神よ、こんなにも遠く

Ist doch der Mensch von dir entfernet;

人はあなたから離れてしまったのです。

Du liebst, jedoch sein Mund

あなたは愛してくださる、しかし者どもの口は

Macht Fluch und Feindschaft kund

呪いと敵意を公言し、

Und will den Nächsten nur mit Füßen treten.

隣人を踏みつけようとするばかり。

Ach! diese Schuld ist schwerlich zu verbeten.

ああ!この咎めは祈って許されるものではありません。

3.アリア(アルト)
Wie jammern mich doch die verkehrten Herzen,

ねじ曲がった心がなんと私を悲しませることか、

Die dir, mein Gott, so sehr zuwider sein;

神よ、あなたにこんなにも背いた心が。

Ich zittre recht und fühle tausend Schmerzen,

私は戦傑し、かぎりない苦痛を感じます、

Wenn sie sich nur an Rach und Hass erfreun.

彼らが復讐と憎しみばかりを喜びとしていることに。

Gerechter Gott, was magst du doch gedenken,

正しい神よ、あなたはどうお考えになるでしょうか、

Wenn sie allein mit rechten Satansränken

彼らがサタン顔負けの術策を弄し、

Dein scharfes Strafgebot so frech verlacht.

厳しい処罰の掟を破廉恥にも嘲笑するとき。

Ach! ohne Zweifel hast du so gedacht:

ああ、あなたはこう考えられるに違いありません、

Wie jammern mich doch die verkehrten Herzen!

ねじ曲がった心がなんと私を悲しませることか、と。
4.レチタティーヴォ(アルト)
Wer sollte sich demnach

だとすれば、いったい誰が

Wohl hier zu leben wünschen,

この世で生きることを願うはずがありましょう。

Wenn man nur Hass und Ungemach

出会うのは憎しみと災いばかり、

Vor seine Liebe sieht?

それが愛の代償なのです。

Doch, weil ich auch den Feind

しかし、この身が敵をも

Wie meinen besten Freund

親友と変わりなく

Nach Gottes Vorschrift lieben soll,

愛するのが神の定めであるからには、

So flieht

逃れます、

Mein Herze Zorn und Groll

私の心は、怒りと恨みから。

Und wünscht allein bei Gott zu leben,

そして、神のもとで生きることのみを願うのです、

Der selbst die Liebe heißt.

ご自身が愛である、神のもとで。

Ach, eintrachtvoller Geist,

ああ、和合に満たされた霊よ、

Wenn wird er dir doch nur sein Himmelszion geben?

神はいつお前に、天のシオンを与えてくださるだろうか?
5.アリア(アルト)
Mir ekelt mehr zu leben,

これ以上生きることなど私にはおぞましい、

Drum nimm mich, Jesu, hin!

だから私をお召しください、イエスよ!

Mir graut vor allen Sünden,

あらゆる罪が私には恐ろしい、

Lass mich dies Wohnhaus finden,

どうかこの身が住み処を見つけられますように、

Wo selbst ich ruhig bin.

安らかに過ごせる、その住み処を。
                         対訳:磯山 雅

マタイによる福音書 5,20-26

 言っておくが、あなたがたの義が律法学者やファリサイ派の人々の義にまさっていなければ、あなたがたは決して天の国に入ることができない。

「あなたがたも聞いているとおり、昔の人は『殺すな。人を殺した者は裁きを受ける』と命じられている。しかし、私は言っておく。兄弟に腹を立てる者はだれでも裁きを受ける。兄弟に『ばか』と言う者は、最高法院に引き渡され、『愚か者』と言う者は、火の地獄に投げ込まれる。だから、あなたが祭壇に供え物を捧げようとし、兄弟が自分に反感を持っているのをそこで思い出したなら、その供え物を祭壇の前に置き、まず行って兄弟と仲直りをし、それから帰って来て、供え物を捧げなさい。あなたを訴える人と一緒に道を行く場合途中で早く和解しなさい。さもないと、その人はあなたを裁判官に引き渡し、裁判官は下役に引き渡し、あなたは牢に投げ込まれるに違いない。はっきり言っておく。最後の一クァドランスを返すまで、決してそこから出ることはできない。」

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