「1日1万歩」は間違い!?

5000人研究で分かった「やってはいけないウォーキング」

 東京都健康長寿医療センター研究所の青栁幸利・運動科学研究室長の著書『やってはいけないウォーキング』(SB新書)が反響を呼んでいます。その内容は、これまで多くの人が健康にいいと信じて疑わなかった「1日1万歩」が、実は寿命を縮める可能性もあるという衝撃的なものです。その内容とは?


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「1万歩を続けさえすれば大丈夫」というわけではない

 1日1万歩ウォーキングが悪いというわけではありません。ただ、いくら毎日1万歩以上歩いても、やり方が悪ければ何の効果も期待できませんし、歩き過ぎるとかえってそれが病気を引き起こすこともあるといいます。

 「1万歩を実現できてさえいれば大丈夫」と過信したり、「歩けば歩くほど体にいい」と間違った思い込みをするのはよくないということです。実は、歩き過ぎも含め、運動のし過ぎは、健康効果がないどころか、免疫力を下げてしまうリスクがあるといいます。

 

40歳を超えたらジョギングからウォーキングへ移行すべき

 たとえばウォーキングの場合、どれだけ歩いても疲れていなければやり過ぎではありません。歩き終わったあとや翌日に疲れが残っている感覚があれば、それはやり過ぎです。疲労を感じるということは、つまり免疫機能が下がっているということなので無理をするのはよくありません。

 また、若いときには軽く1日1万歩をこなせてきた人でも、加齢とともに体が悲鳴を上げ始めます。悲鳴を上げる場所は、ずばり“関節”。年をとっても筋肉や体力をつけることは可能ですが、関節は鍛えることができません。体力はあっても膝関節がガクガクしたり、膝がすり減ったりして痛みが出やすくなります。それはどこかで体が無理をしている証拠なので、そうした体のサインを見逃さないようにしましょう。

 人は痛みが出た瞬間から体を動かすのがおっくうになります。それをきっかけに歩くのをやめ、急激に体力を落とす人も少なくありません。ですから40歳を超えたらジョギングをしていた方はウォーキングへ移行し、1日1万歩いていた方は歩数を減らすとともに、生活の中に「中強度の運動」を組み込むことが長生きするためには必要だといいます。


「1日8000歩」と「20分の中強度運動」が運動の黄金律

 勧められる歩き方は「1日8000歩。その中に20分の中強度の運動を取り入れる」というもので、これは、群馬県中之条町に住む65歳以上の住民5000人を対象に、15年以上の年月をかけて身体活動と病気予防の関係を調査し、導き出した「病気にならない歩き方の黄金律」です。

 下の図は、「1日当たりの歩数と中強度の活動時間」と「予防できる病気」との関係を示したもので、15年にわたる研究の結果、「1日8000歩/中強度運動20分」であれば、要支援、要介護、うつ病、認知症、心疾患、脳卒中、がん、動脈硬化、骨粗しょう症の有病率が低いこと、さらに高血圧症、糖尿病の発症率がこれより身体活動が低い人と比べて圧倒的に下がることが分かりました。

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 ちなみに「1日1万歩/中強度運動30分」はメタボリックシンドロームに悩んでいる人には有効です。しかし、それ以外の人にとっては1万歩や1万2000歩の生活を送っても病気予防という点では8000歩と効果が変わらないという結果が出ています。むしろむやみに歩数を増やすと、疲労により免疫力が下がったり、関節を痛めたりする可能性もあるので、「1日8000歩/中強度運動20分」がベストだといいます。

 ウォーキングにおける中強度の運動とは、「なんとか会話できる程度の速歩き」です。鼻歌が出るくらいののんびりした歩き方は低強度、競歩のような会話ができないくらいの歩き方は高強度、そのどちらでもなく、なんとか会話ができるくらいを中強度と考えます。

 強度は骨や筋肉にどれだけの刺激があるかを示しています。私たちはふだん何気なく「歩く」という言葉を使っていますが、「歩く」という行為には“量と質”という2つの観点があり、量は歩いた「歩数」。質とはどれだけの強さで踏み込んで歩いたかという「運動強度」。これまでは「歩数」だけを気にする方が多かったのですが、実はどれだけの運動強度で骨や筋肉に刺激を与えることができるかが運動においては重要です。

 なぜなら、多くの人は加齢とともに骨密度が減ったり、人体最大の“熱生産工場”である筋肉の量が減ることで体温が低下したりし、病気を引き起こしやすくなります。しかし、運動により体に適度な刺激を与えることで、骨密度や筋肉量の低下、ひいては体温の低下を防ぐことができるからです。


体温が1度下がると免疫力が30~40%低下

 下の「年齢と体温」の図を見ても分かるように、人は加齢とともに平均体温が低下してくる傾向にあります。この平均体温の低下は、健康を大きく左右します。というのは平均体温が1度下がると免疫力は30~40%低下するからです。逆に、体温が1度上がると免疫力は約60%アップするといわれています。

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 また、人間の体温は1日の中で変化しており、若くて健康な人の場合、睡眠中が最も体温が低く、起床後に徐々に体温が上がって夕方にピークに達し、夜に向けて体温がどんどん下がっていきます(下の図を参照)。この体温の降下が「眠気」をもたらします。

 さらに就寝後も体温は下がり続け、深夜から早朝の時間帯に最も低くなります。なぜ就寝中に体温が低くなるかというと、それが「体を休める」のに最も適した状態だからです。

 従って、「就寝時」よりも「起床時」のほうが体温が低いのが理想ですが、歳を重ねたり、不健康になると、体温のリズムが狂い、夕方になっても体温が十分に上がらなくなったり、「起床時」より「就寝時」のほうが体温が低くなってしまう人が多くなります。

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 群馬県中之条町の住民1600人を対象にした調査では、「起床時」より「就寝時」の体温が低い人は不眠に悩まされているということが分かっています。不眠は認知症の原因になるともいわれており、免疫力アップのためにも、不眠や認知症の予防のためにも、体温のコントロールは重要です。

 若い時と同じように体温リズムを刻むことができていれば何も問題はないのですが、年をとったから病気になるのではなく、加齢に伴い人体最大の“熱生産工場”である筋肉の量が減り、体温のリズムが狂うことで病気を引き起こしてしまいます。ですから、体温を少しでも理想の形に近づけるために、1日に20分の中強度の運動を取り入れることがお勧めだといいます。

(日経Goodayより)
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